第4.5話 愛しのあなたへ

『鮮花ちゃんへ

私はソリーダという田舎町へ引っ越すことになりました。この手紙を見ているということは、八雲君と合流出来たんだろうから、元の街での詳しいことは彼から聞いてください。私が鮮花ちゃんに伝えなければいけないことはひとつ。この世界が待つ運命は崩壊だけだということです。この世界の私の家系も医者なんだけど、近頃各地からやってきた患者の多くは致死率が極めて高く、感染力も強いウイルスに掛かっていて、もちろん精一杯看病したけれど皆死んでいってしまいました。けれど元の世界よりも病原体の種類の多いこの世界では、病気についてはまだ研究が進んでいないらしく、誰も信じてくれません。なので腕の悪い医者だとこの街を追い出されてしまいました。元の世界の私たちは幸い耐性を持っているらしい(八雲君と私しか調べられていませんが多分自然免疫でなんとかなる)ので恐らくは大丈夫だと思いますが、治療薬はまだ見つけられていません。このままでは間に合いません。なので八雲君には早急にこの世界を離れる方法を探してもらうことにしました。私はソリーダの街に残って治療薬の開発を続けます。方法が見つかった時、ソリーダの街に来てくれると嬉しいです。その時にまだ開発出来ていなければこの世界に残るか、逃げるかの選択をします。

最後に、鮮花ちゃん大好きです。本当は鮮花ちゃんに会いたくて仕方ありません。でも鮮花ちゃんに会ってしまうと、もっともっと話していたくて、この世界を捨てて2人で幸せに生きる世界に逃げたくて仕方なくなると思いました。なのでもうしばらくは鮮花ちゃんに会えないままでいることにしました。どうにかこの世界の人も救いたい。その一心で今も研究を続けています。次に会える時、鮮花ちゃんに恥ずかしくないようになんとか成果をあげるから、あと少し待っていてください。

大好きです。何年経ってもずっと。

神楽日葵より』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒロイン は 逃げ出した! さかさま宇宙猫 @suiren_nei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ