第3話 中型種の民意

ロリポップ「行き先は……やっぱり、スノードロップなの?」


 木本のこの子が事前に動いているだけ有って、心配そうに切り出したロリポップちゃん。


ツリピフェラ「コーティス様の可能性も有るけれど、まずは1000年前の事を知らないセフィリカ様の所に行こうと思うの」


聡「三大強国のどれかから領地を分け与えられた、移民の国が有るんだね。

 確かに、警戒されないという意味では古来から居るセイレーンの仲間よりも得策だろうね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


 地図で見た国名とファンタジーで培った知識を総動員して、初見ながらも何とか話に付いて行く僕。



ロリポップ「お兄ちゃん、良くツリピフェラちゃんに付いて行けるね」


聡「この子は口数こそ少ないけれど、心は真人間だからね」


ツリピフェラ「ツリは……」


聡「木本プリバドでしょう」


ツリピフェラ「先に言われたの、初めてなの」


ロリポップ「……この子に先回りできる人、ロリは初めて見たの」


ツリピフェラ「そうかも知れないの」


 唖然とするロリポップちゃん。 僕としては一人称がロリなこの子の方が意外なんだけれど、何しろここは異世界だからね。



聡「ところで、セフィリカ様って言う事は、セラフを冠した天使属なのかな?」


ツリピフェラ「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れないの」


 この子にしては珍しい反応だね。


ロリポップ「アスピスって、後から来た割には魔法具の生成に詳しかったり、良く分からない所が多いからね」


聡「天界からの移民の可能性が有るという位の認識なんだね。

 種族って一般的に名詞だけれど、アスピルって吸収するって言う意味の動詞だし、仮名かも知れないよね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


ロリポップ「できれば協力したいとは思っていたけれど、ロリにはやっぱり難しい御話なの」


 協力的な所も含めて、この子らしい反応をして見せたロリポップちゃん。


聡「僕等だってシュクレの女の子達には感謝しているんだから、安心してね」



ロリポップ「ありがとうなの!

 ところで、この世界とは無関係に見えるのにロリ達を助けてくれるお兄ちゃんって、中型種やプレシアの皆からは人気が出そうだけれど……正妻にするとしたら、どの種族を選ぶの?」


ツリピフェラ「確かに、そう言う考え方もしようと思えばできるの」


聡「どの種族って言われても、僕はまだこの世界に来て半日だし……それに正妻という事は、女性が多いこの世界では側室をめとるのが普通なの?」


ツリピフェラ「つまり、聡お兄さんの世界には男性が多くて、側室は外国の言葉の訳なのね」


聡「外国と言うよりは、昔の言葉かな」


ツリピフェラ「……昔と今でそんなに違う事も、向こうの世界には有るのね」


聡「そう言う事だね」


 とても意外そうに驚いたツリピフェラちゃん。

 考えてみれば、この子達は何千万年も昔の精霊道を今もなお守り続けている原初属性の木本プリバドだから、近代日本みたいな感覚は想像できないんだね。



聡「それでも、それがこの世界の常識ならドレスのあの子は正妻を、控えめな他の二人も側室を前提に花嫁修業している可能性が高い訳だから、その場合はあの子達の期待に応えてあげるのがあの子達のお兄さんとしての僕の務めだと思うんだよ。

 勿論、情勢によっては恋愛をしている暇は無い訳だし、今回の一件の成り行きにもよるとは思うけれど。


ロリポップ「……お兄ちゃんには、有力な先客が居たのね」


ツリピフェラ「きっと、先客自体が有力と言うよりも、お兄さんが女性理解の人だから有力に見えているの」


聡「ドレスのあの子に関しては、その両方だと思うけれどね」


 遠距離とは言え恵まれている子と意気投合している訳だし。


ロリポップ「いいなあ。

 ロリも、お兄ちゃんみたいな優しい人と恋をしてみたいなあ」


聡「それじゃあ、ほぼ正妻の第一側室にならない?

 他の種族の皆も今回の一件とはきっと無縁なロリポップちゃんには優しくすると思うし、僕としても小さな良い子が相手の方が色々と頑張ってあげたくなるからね」


ロリポップ「わあい! お兄ちゃん、ありがとうなの♪」



 満面の笑みを浮かべて御嫁さんになってくれた、少なくともこの世界の中では大人の年齢と思われるロリポップちゃん。

 女性が多い世界の中で産みの苦しみにも配慮をすると男女比÷2位のハーレム型になるのが道理だけれど、この精霊界の中で1:3のまま僕等に人気が出ると時期姫君のシェリナさんならまだしも小蔭ちゃんがねたまれそうだからね。


 女性的な世界観は良くも悪くも女性的な訳だから、それも加味すると様々な種族と仲良くしているこの子に先に側室になって貰うムーブも女性配慮と言えよう。

 ……成り行きがカオス的でも、心境はニュートラルという訳だね。

 この場合のロウ側は、勿論中型種を中心とするこちらの世界の民意だけれど。



 それからは、一時の語らいの後、普段の半分程度の速度で自動前進してくれる夜間モードにしたらしいミックスフロートの船室で一晩を迎えた。


 慣れない異世界でもこの子達しか居ない湖の上なら安心できるし、風珠には一通りの設備も整っている訳だから、僕等が気にするべきはツリピフェラちゃんが隣のベッドで寂しくないかの一点になる筈だった。 と言うのも……


ロリポップ「クゥッ、スゥ……」


ツリピフェラ(良い子良い子)


聡「ねえ、ツリピフェラちゃん。

 眠れないのなら、お兄ちゃんが撫でていてあげようか?」


ツリピフェラ「ツリは12パースも眠れば十分なの」


 パース? パーセント日という意味なら3時間だけれど、木本の擬人化という意味なら睡眠時間も大型動物位の感覚なのかな? 外敵が居ない分睡眠時間も伸びているとは思うけれど。


聡「それだと、僕等が寝ている間ツリピフェラちゃんに寂しい思いをさせちゃうね」


ツリピフェラ「木本プリバドは、元々そう言うのが得意なの。

 それでも……聡お兄さんのそう言う所、嬉しいの」


 表情以上に仕草と声色で語るこの子が可愛くなって髪を撫でてあげる僕。

 第一側室になったのはロリポップちゃんの方なのに、この子は小型種らしくベッドに入ると直ぐに寝入っちゃったからね。

 結婚初夜を意識するのは中型種の特性なのだろう。


 それにしても、本人の性質以上に魔法具が高性能過ぎるのも考え物だな。

 揺れない船室や風珠に積み込まれた装備を思い返して、僕はつくづくそう思った。



 翌朝。

 シュクレの朝は早いのか、僕が起きた頃にはアスピスの大地はもう目の前だった。

 魔法具の製造に長ける中型種という時点で大体予想はしていたけれど、石造りの西洋建築の細部に魔法具と思われる近未来的な装飾が施された、これぞファンタジーと言った雰囲気の城下町である事が遠目ながらも見て取れた。


聡「いかにも強国と言った雰囲気だけれど、大丈夫かな?」


ツリピフェラ「昔と同じなら、アスピスは戦闘よりも外交が得意なお姉さんなの」


ロリポップ「中型種のお姉ちゃん達は、プレシアみたいに強くて優しいお姉ちゃんなの♪」


ツリピフェラ「あの国は、セイレーンみたいなサラマンダーなの」


聡「この世界では、強さと美麗の境界線が曖昧なんだね。

 いかにも黒いドレスとか着ていそうだけれど、この分なら白系のアスピスは安心だろうね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


 やっぱり、そうなんだ。

 僕は確信を胸に風珠に乗り込むと、一先ひとまず朝食を摂る事にした。



 例の如く街の直前から風珠の前側を進んでいると、予想通り正面に入口の門が見えて来た。


聡「やっぱり、各国の入口はシュクレの貿易品が入り易い様に造られているんだね」


ロリポップ「むしろ、この国の入口はここだけなの。

 出口は御城の裏側にも有るみたいだけれど」


聡「つまり左右から来る時は外壁沿いに迂回して正面の街道から入るという事だね。

 貿易品が海側や東洋から来る中で、国防を意識しているとそうなるのかな?」


ツリピフェラ「きっと、そう言う事なの」


衛兵「ロリポップ様、珍しい御連れを同伴していますね」


 その言葉だけでも、彼女等が普段から柔和である事が良く分かる。


ロリポップ「えっへん!

 この子達は木本プリバドのツリピフェラちゃんと、異世界の聡お兄ちゃんなの♪」


 この子達?

 ……彼等や兄妹みたいに呼び方が男性基準で決まるのは、日本の特徴か。

 僕が木本のこの子より柔和なのは確かだけれど、英語はTheyだし。

 それでも、彼女等の反応はそんな風に思った僕とは一線を画するものだった。



衛兵「異なる世界線……もしや、天界の出身ですか?」


聡「僕は地球って言う魔力の代わりに機械の有る別の惑星……別の大地から来ましたが、天界って伝記や創作に見られる天使とか神格とかが居るあの場所ですよね」


衛兵「異なる大地に住みながら、天使を御存じとは興味深い。

 この様な情勢ですし、本日はロリポップ様も御城に招待致しますね」


聡&ロリポップ「有難う御座います&ありがとうなの♪」



 そんなこんなで予想よりも遥かに順調に姫君の間に通された僕等を待っていたのは、ウェーブの金髪と繊細な装飾が施された華やかな朱色のドレスが印象的な、これぞ古典西洋の姫君と言った雰囲気の女性だった。


アスピスの姫君「ロリポップさん、友好国の御二方も、アスピスの御城へようこそ!

 私が、この国を治めるセフィリカ=ガーネットです♪」


聡「初めまして。 私は、志方聡と申します」


ツリピフェラ「初めまして。 ツリは、ツリピフェラ=フローリスなの」


 内向きな種族だとは思っていたけれど、やっぱりこの子も初めましてなんだね。


セフィリカ「クスクス……私ですって♪

 聡さんも、可愛いのですね!」


聡「そう言えば、東洋怪異は我等とか言いそうですものね」


ロリポップ「お兄ちゃんは、お姉ちゃんみたいなお兄ちゃんなの!」


衛兵「優しい御兄さんで、良かったわね♪」


ツリピフェラ「そう言う事なの」



 この微笑ましい光景に対して、年上のお姉さんらしい憂いの有る表情をして見せるセフィリカさん。


セフィリカ「愛情の人にとっては、大変な時期に居合わせましたね。

 ですが、天界を知っている程外の世界から来られたのでしたらそちらの都合も有るでしょうし、魔道生産種族の私からは貴男の無事を御祈りしつつ陰ながら協力させて頂く他有りません」


聡「こちらこそ。 お姉さんみたいな天子様に心配させて、何だかごめんね」


 敬語の方が良かったかなとも思ったけれど、ニュアンスは伝わったみたいだね……その割には衛兵がそわそわしている様に見えるけれど。


聡「やはり、少しばかり不敬でしたね」


 そう言って一礼すると。


衛兵「そう言う訳では無いのです。

 アスピスの建国に関する聖典の一説と似ていた物ですから、驚いたのです」


 天界の中で多数派寄りの姉側と異を唱えた妹側とではそう言った会話にはならないだろうし、差し詰め少数派側の聖女の恋人が姫君に対して言った言葉だろうね。


聡「この世界に初めに降り立った熾天使してんしは、さぞ女性的な御方だったのでしょうね」


セフィリカ「熾天使と言うよりも貴男の方が……いえ。

 私達がただ修行不足なだけですね。

 見た所貴男は今回の一件とは無関係な様ですし、こちらを使うと良いでしょう」


 その言葉と共に、彼女は移動用の物と似ている銀色の円盤型の魔法具に純白の装飾が施された物を僕に手渡した。



聡「これは?」


セフィリカ「通信用の魔法具です。

 何か相談したくなった時は、これでお姉ちゃんに頼りましょうね」


 何だろう?

 僕よりも数cm程上だからか優し気に含み笑いをしていたのが分かったし、素直に甘えたくなったんだけれど……彼女等の都合や技術も考慮すると、頼り過ぎない方が良いだろう。


聡「今の僕等は冒険者みたいな物だから、貴女あなたの都合も考えると連絡の機会も限られるとは思いますが、喜んで使わせて貰うね」


ツリピフェラ&ロリポップ「それが一番なの」


 片方の意図がどちらなのかは測り兼ねるけれど、そう言う事だね。



セフィリカ「ところで、次はどちらに向かわれるのですか?」


聡「東洋怪異にはもう行ったので、お姉ちゃん達と仲が良さそうな中型種の国に向かおうと思います」


セフィリカ「それが妥当ですね。

 それでは、セレーネさん……御隣のセイレーンの国の姫君に貴男方の事を伝えておきますね」


聡&ロリポップ「お願いします&ありがとうなの♪」


ロリポップ「それじゃあ、行ってきまーす!」

聡&ツリピフェラ「行ってきます&行ってきますなの」


 ……彼女等に余計な心配をさせる事は無いだろう。

 礼節にのっとれば伝える所と分かっていながらも敢えてそう判断した僕は、多くを語る事無く湖の左側を目指す事にした。



ツリピフェラ「次は……本当に、セイレーンの国に進むの?」


聡「良く分かっていらっしゃる。

 僕等の立場や各種族の民意を考えるとあの国は避けた方が良いから、できれば左側に進みたいのだけれど」


ロリポップ「えっ、スノードロップに行くの?

 ……確かに、セイレーンの皆はシュクレとは色々と違うけれど」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


 王道の場合は多くを語る所だけれど、大人向けならこう言った手法も有るだろう。

 話し上手なロリポップちゃんからこの世界での各種族の特産品や行事、生活様式や属性別の魔法について聞き出す事約8時間半後、僕は納得した様子のこの子達と共にスノードロップの地に降り立った。



聡「ところで、アスピスと同様に城壁は厚いみたいだけれど……スノードロップって良く上下に龍系の大型種が居るのに生き残れているよね」


 最も、それが理由でこの国には安心して入れるんだけれど。


ロリポップ「そう言えば、この国は攻め込まれたって言う話を聞かないの」


ツリピフェラ「プレシアがセイレーンに、サラマンダーがシュクレに優しいお姉さんを目指しているのも有るけれど……東洋怪異の有力者が良くも悪くも他種族の都合を考えて来た事と、スノードロップが遠距離からの古代生物特効持ちで外見以上に強いからと言う事は無視できないの」


聡「僕等の世界の中生代の生き物達が寒冷化によって衰退した事を考えれば冷気特効には頷けるけれど、スノードロップもまた小型種配慮の優しいお姉さんだからと言う理由も有りそうだよね」


ツリピフェラ「そう言う事かも知れないの」


ロリポップ「それでも、あれからの東洋怪異は凄く良いお姉さんって聞いているの」


聡「そうだね。

 何だか、プリバドとシュクレが仲良しな理由が分かった気がしたよ」



 木本のこの子に、いつも以上に穏やかに微笑み掛けるロリポップちゃん。

 それからは、意外にも温暖な四国の秋口位の気候の林の先に見えた御城までは予想以上に早く到着した。

 東洋を許しているツリピフェラちゃんはあんな風に捉えていたけれど、属性観から対プレシアを意識しているのか、城下町は南側……この世界で言う下側に配置されているみたいだね。


ロリポップ「こんにちはなの♪」


衛兵「あら、ロリポップちゃん♪

 チューリップちゃんも、久しぶりね」


 やっぱり、スノードロップも柔和清楚お姉さんなんだね。

 と思った矢先。


ツリピフェラ「ツリは木本プリバドなの」


衛兵「えっ!?」


 その言葉に、衛兵が凍り付いた。


衛兵「ツリって……姫君の御付きをされている、あのツリピフェラさんですよね。

 直ちに謁見の準備を致しますので、御連れの方もこちらにいらして下さい」


聡&ツリピフェラ「宜しくお願いします&宜しくなの」



 石造りながらも陽光を取り入れた、明るい雰囲気のレッドカーペットの通路を慣れた様子で歩くロリポップちゃんに付いて行く僕等。

 風珠は浮かせておけるから良いけれど、これだとツリピフェラちゃんが心配だな。


ロリポップ「衛兵さん、怖がらせちゃったね」


 案の定と言った様子で左側から振り返ったロリポップちゃん。


聡「それを意識したら、東洋と縁の有る僕等は情勢を動かせないよ。

 ツリピフェラちゃんも、さっきのはシュクレがサラマンダーを信頼しながらも国境を隔てている様な物だから、気負わないでね」


ツリピフェラ「そんな風に言ってくれたの、聡お兄さんが初めてなの」


衛兵「思えば、スノードロップとプレシアのあの一件以来、私達は小型種の皆さんに不幸が及ばない様に意識していながらも、木本の女の子には何もしてあげられませんでしたね」


ツリピフェラ「左側の有力者にそう言って貰えるだけでも、ツリには十分なの」


衛兵「御心遣い、感謝致します。

 東洋の御兄さんも、どうか緊張なさらずにこちらの一室で御待ち下さいね」


 あの様な会話の後でも、穏やかに微笑んで見せた衛兵さん。

 やっぱり、セイレーンの仲間と思われる中でも一際有力なこの国の女性は、衛兵であっても愛情深いお姉さんなんだね。



 その10分後。


スノードロップの姫君「ロリポップちゃん、ツリピフェラちゃんも、良くいらっしゃいました! 聡御兄さんも、慣れない土地と心配なさらずにコーティスお姉ちゃんに甘えましょうね♪」


 明るいコーティス様はそう言ってくれたけれど、近衛兵の皆さんには僕が最強大国の東洋怪異の使者に見えるのか、服装が違うとは言え不敬に当たらないか心配しているみたいだね。 ……それなら。


聡「コーティスお姉ちゃん、ありがとう。

 僕も小型種の女の子達が協力してくれたから良かったけれど、思えば異世界に来てから緊張しっぱなしだったから、そう言って貰えてとても嬉しいよ」


ロリポップ「ああ、通りで朝までぐっすりだったのね!」


コーティス「あらあら、もうミックスフロートに乗せて貰う様な仲だったのですね♪

 それでは私も、他の子に取られる前に可愛い貴男を連れて帰っちゃおうかしら?」

 ツリピフェラちゃんとの御話は、その後でも遅くはないでしょう」


姫君のメイド「それが良いですね♪

 このマリアンナも、彼の様な愛情深い人に御仕えしてみたかったので」


ツリピフェラ「近衛兵の皆さんは、それでも大丈夫?」


近衛兵「木本と同行している時点で東洋の方ではなさそうですし、朱雀隊の可能性も無くは有りませんが、それが姫君や貴女方の御意向であれば致し方有りませんね」


聡&ツリピフェラ「有難う御座います&ありがとうなの」


 何だか、凄い流れになっちゃったな。

 そう思ったのもつかの間。



コーティス「それでは、コーティスお姉ちゃんが御部屋まで連れて行って差し上げますから、手を繋いで付いて来ましょうね♪」


聡「お願いします」


マリアンナ「俯いちゃって、可愛いんですね♪」


 ああ、お姉ちゃん優しい。

 銀髪ストレートの長身な姫君に手を引かれながら、柔和なメイドさんに笑顔で御顔を覗き込まれるこのスチュエーションだけでも彼女等に甘えたくなるには余り有る。

 金髪のセフィリカさんもそうだったけれど、彼女等は女子ゴルフの海外勢みたいに美人でありながら見た目からして僕よりも強そうで守って貰えそうでもあるからね。


ロリポップ「……やっぱり、お兄ちゃんの事を幸せにできるのは中型種のお姉ちゃんなのね♪」


 ロリポップちゃんも、木本プリバドと連立国を組んでいるだけあって元々仲良しなスノードロップの女性陣には嫉妬心は沸かないみたいだね。


ツリピフェラ「……そう言う事かも知れないの」


 少しの間、僕の様子を眺めてからそう言ったツリピフェラちゃん。



聡「それにしても、お姉ちゃん達みたいな年頃の美人には恋人として良さそうな男の人が既に居そうなものだけれど……僕なんかで、不釣り合いじゃないかな?」


 これは日本育ちの僕にとっては当然の疑問だったのだけれど。


コーティス「あらあら、心配になっちゃったの?

 こんなに素直な甘え上手で、貴男は十分魅力的なんですよ♪

 ねえ、マリアンナさん?」


マリアンナ「そうですね。

 私はメイドですのに、女性想いでしっかり愛して頂けそうですもの♪」


コーティス「それに、この世界で木本に認められるという事には貴男が思っている以上の重みが有るのですよ。 ですから、貴男に自信が持てる様にお姉ちゃん達が褒めて育ててあげますからね♪」


聡「うう……コーティスお姉ちゃん、愛情深過ぎるよ」


ロリポップ「お兄ちゃんがロリやツリピフェラちゃんに優しかったのと同じなの♪」


ツリピフェラ&コーティス「そう言う事なの&そう言う事ですね♪」


聡「何となく、分かったよ」


 つまり、これは日本のお兄ちゃんが甘え上手な妹分に対して愛情深く肩入れしているのと同じ事を、褒めて伸ばすタイプの清楚柔和お姉さんがしていると言う話だね。


マリアンナ「聡明なのですね♪」


 穏やかに褒めてくれたマリアンナさんに微笑み返しながらそう思った僕は、母性保護という言葉では語り尽せない程愛情深い中型種としての民意を持った等身大のお姉さんの御部屋に入って行った。

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