3 初めまして異世界(3)

(いただきます的なものか? 女神様と言ったな。神がいて、信仰があるということか。

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いやいや!!! ちょっと待て、言葉! サラッと会話した!! てゆーか、ここ何処よ!? 当たり前にうちの近所じゃないって思ってるよな俺!?)

 考え込む時の癖で俯き目を閉じていたが、質問をしようと顔を上げてイケメン外国人君を見る…手前に画面がある。半透明のゲームとかでお馴染みの画面が。

 そこで思い出す。飯食ってソファーで寝た後に見た夢を。

(夢じゃなかった…って事か? これは現実? じゃあ、この画面も本物か?…触れ…るよおい)

 そっと指を伸ばしてみると、スマホの画面をタッチしているような感触がある。そして触った途端に表示されたのは、ゲームのステータス画面にしてはシンプル過ぎるものだった。





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名前:エイト・ネカサ(男)47歳


魔力:310


属性:水、風、氷、無


魔法:アクアバレット、エアーバレット、アイスバレット、身体強化、生活魔法


スキル:料理4、解体2、調合1、計算3、小物作成2、筆耕2、水泳4


隠しスキル:言語翻訳、鑑定、収納魔法(日本で所有しておりイエナウルムで使用可能な物有り)、状態異常無効、女神の謝罪



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(ツッコミどころが多過ぎる…魔力の表示はあるのにHP、体力的なものが無いのは何でだ? 魔法なんて使ったことないが何故か使えるようだし。何だコレ…もういい置いておこう。

 料理は、まあやってたしな。解体とは? 調合も意味が分からん。計算…3て低くないか? 最低でも16年勉強してんだが…悲しくなってきた。忘れよう……小物作成…はあれか、アクセ作ったりしてたしな。男のクセにとか言われたけど…

筆耕? 何だこりゃ……まさか、習字か? 小学6年間やってたな、嫌々だが。そんなんで筆耕スキル貰えるのか。コワッ! 水泳は中高の部活…しかないか。この流れだと…解体は、魚捌いたからとか? なら、調合はカレーをスパイス混ぜ合わせて作ったからか? インドカレー恐るべし。インド人の殆どが調合スキル持ちじゃねぇか。ってか、隠しスキル…あぁぁ…頭痛い。

 隠せてるんだろうなぁぁぁ!? 他人から見られたりしないよなぁぁぁぁ!?)

 見たくない。もう充分にキャパオーバーだ。50歳間近のオッサンにどうしろと言うのだろうか。深く溜め息を吐いて画面から目を離すと、こちらを見ているイケメン外国人君。どうやら食事は終わっていたらしい。挙動不審であったであろうオッサンの様子を見て、何も言わずに待っていてくれたようだ。

「えー、あの、大丈夫っすか?」

「ああ。あ、そうだ。話し辛そうだし普段通りでいいぞ?」

「え、いい…のか? 助かるよ。上を目指すならいつかは覚えないといけないけど、まだ勉強すらしてないんだよなー」

 ははっと朗らかに笑うイケメン外国人君。ダークブロンドの髪は短く、目の色はアイスブルー。少し垂れ気味で優しい印象だ。程よく筋肉がついており、普段から鍛えているのが分かる。イケメンめ。

「俺はエイト・ネカサという。君は?」

「クラウス・シュッテ。銅1の冒険者だ。よろしく」

(銅1とは?)

「クラウス君ね。よろしく。それと助けてくれてありがとう」

「クラウスでいいよ。礼はいらない。冒険者として当然のことをしたまでだからさ」

「そうか。俺もエイトでいい。クラウスにとっては当然かもしれないが、礼くらい言わないとな。ところで、銅1というのはなんだい? 冒険者の強さを表す言葉のようだね」

 気になったので聞いてみると、クラウスは何とも微妙な顔をしている。

「あのさ、もしかして…だけどさ。エイトって転移者なのか?」

(おぉう! いきなりバレてるぞ。なんだ、どうする? 認めていいのか、ダメなのかどっちだーっ!!)

「エイトみたいな黒髪黒目ののべっとした顔の転移者が、200年前くらいにカッセルテルンにいたんだよ。見た感じが似てるし、そうじゃないかなってさ。物語にもなってるんだぜ! 子供のころは転移者シリーズをよく読んだなぁ」

(のべって…)

 なにやら地名らしきものも聞こえたが、転移者の方が気になる。今は後回しだ。

「ああ、そうなんだ。じゃあお仲間かな。俺のいた国とその近くの国はみんな似たような特徴だからな。というか…転移者シリーズ…シリーズになる程いるのか…」

「まあ、ここ100年くらいはなかったみたいだけどね。最後は100年前にメノンハイムにイングド人だって男が当時の王族と喧嘩したって話が残ってるな」

「イングド人?」

(イギリスか?インドか?どっちだよ…)

「ま、いいか。そんなに転移者が来てるんなら別に隠す必要はないんだろう? 何か気を付けなきゃいけないことがあれば教えてもらいたいが」

「う~ん…そうだなぁ…おっと、とりあえず町まで案内するから移動しない? 俺も依頼達成の報告しなきゃだし、ここはそこまで危なくないけど魔物がでないとも限らないし」

(魔物なんているのか…まぁいるよな。異世界だし、定番ネタだしなぁ。)

「あぁ、分かった。世話を掛ける。悪いな、クラウス」

「いいってことよ! んじゃ、早速いこうぜ。こっちだ」

 クラウスの半歩後ろを歩きながら周囲を見渡すと、進行方向の先に城壁とそこからピョコンと飛び出すように城のような建物が見える。

「見える? あれが今から行く町。アウグスっての」

「へぇ。大きな町なのかい?城壁もあって立派だねぇ」

「まあね。ヒルシュタールでも王都やハイデンに続いて大きな町だからな。アウグスは冒険者の町って呼ばれてるんだ。ギルドもヒルシュタールで一番でかいしね」

(ほぉ…文明の度合いも見たいし、それなりに大きな町ならいろいろと確認できるか)

「そうか。楽しみだよ」

 期待とほんの少しの不安を感じながらも、年甲斐もなく燥ぎそうになる自分がいる。まずは、クラウスに置いて行かれないように頑張って歩くしかない。アウグスの城壁は距離があるため小さく見える。アラフィフのオッサンにはなかなかに厳しい距離だった。

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