2 初めまして異世界(2)

 大きな声が聞こえる。体が揺さぶられ、二の腕辺りをポンポンと叩く感触。仰向けに寝ているみたいだが、後頭部に何か当たっていて痛い。

(なんだ? なんか気持ちが悪い。車酔いみたいな…揺すらないでくれ…うぅ吐く…)

 無意識に眉間にシワが寄り、呻き声まで出てしまう。それでも体を揺すられ、声を掛けられている。何を言っているかは分からないが。仕方なく、本当仕方なく目を開ける。するとそこにはイケメン外国人がいた。驚き過ぎて固まる。

(え、どうしっ!? え??…は?)

 混乱して声が出ない。ポカンと開いたままの口が引きつる。

「&%…##℃$…@¥$?」

 ・

 ・

 ・

「は?」

(英語じゃないぞ? フランス語でもない。ポルトガル語…はよく知らんが、あと何があるんだ? ロシア? イタリア?…いや、なんか違う…ナンダコレ!? なんだよコレ!!!)

 頭を抱えた瞬間、途轍もない痛みが襲う。

「ぐあぁぁぁぁぁ!! がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 あまりの痛みに転げ回る。目から鼻から毛穴から、ブワッと大量の水分が出る。このまま死ぬのかと思った途端、嘘のように痛みが消える。自分の荒い呼吸音が聞こえる中、再度イケメン外国人が話し掛けてくる。

「おい、どうした!? 大丈夫か??」

「へ?」

「怪我してたのか? 頭か…見せてみろ!」

 手を伸ばしてこちらの頭を掴み、意外と優しい手付きで触れてくる。しっとりと濡れて顔や首に張り付く髪越しに。暫くお互いが無言で頭を触り触られている。

「怪我は無いようだぞ?」

「あ、あぁ…すまん。急に頭が痛くなって…でも、もう大丈夫みたいだ。ありがとう」

「そっか、よかった…すんげぇ苦しみ方だったからさ、俺も見落としたのかと思ったよ。でさ、何でこんなトコで寝てたんだ? あ、寝てたんですか?」

(急に丁寧?)

「いや、それが、何でだろう…俺もよく分からないんだよ。確か、家に帰って飯食って、なんか疲れたなーってソファーに横になって…」

 仕事が終わってからの自分の行動を思い出しながら、ひょいと顔を上げると目の前にイケメン外国人…の腹が鳴る。

「あははは…昼飯食べるとこだったんだ、です」

「あー、なんだ。ホントすまん。気にせず食べてくれ。俺はさっき家で食べたばかりだ」

「えと、じゃあ、うん、食べます」

 イケメン外国人君はその場で胡坐をかくと、背負っていた袋を手にする。口を縛っている紐を解き、取り出したのは木で編まれた小振りな籠。

「女神様に感謝を」

 小さく呟くと、胸元に右手の人差し指でクルッと円を描いた。

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