他人妹

@@@

玲那は実の妹ではない。

なんなら義妹ですらない。

5年前に起きた世界大戦のきっかけとなった大規模テロの際に

一緒に巻き込まれた赤の他人だ。


だが、身寄りがなくなった俺達は、生き延びる為に必死に闘った。

その中で俺は裏社会に足を踏み入れ、結果としてこの組織「DAAT」に所属している。

幸いにも、二人とも量子適性があったおかげで正規隊員となり、生活は保証された。

今の生活に不満はないが、いわゆる「ふつう」の人間として表の社会で生きていくことはできなくなったわけだ。


それが良いか悪いかは別としても。

@@@


現在、表の世界──地球上は、第四次欧州連合間紛争終結後の西暦2204年、

それまであった地球上のすべての各政府機関が統合・合併し、

ニューワシントンに首都を置く全地球Malkuth包括Inclusive統合Integrated政府Governmentが発足。

その後約10年間、全世界であらゆる戦争はおろか、

紛争、闘争、争いに至るまで、何一つ発生していない。


あまりにも平和すぎるのだ、不自然な程に。


人間が争いをやめられない生き物だというのは、

全人口の実に3分の1を失った第三次世界大戦後の敗戦国の処遇しょぐうで揉めに揉めて

結局4回にも及ぶ欧州連合間戦争が勃発ぼっぱつした事からも明々白々である。


ではなぜか。

DAATはこれまでの調査の結果、地球全土にごく薄い量子精神干渉場を展開されている。

と結論付けている。

しかし、あまりにも地域による干渉場の濃度差が無いため、発生源を突き止めることはできていない。


「お兄ちゃん、もう本部着くよ?……別にもう気にしてないから大丈夫だよ」

呑気のんきに考え事をしている間に本部に着いたようだ。


急にだんまりしたのを怒ったと勘違いしたらしい。まあかわいいのでいいや。

「そうか。……報告が終わったら、何か食べに行くか?」

玲那の顔が視覚エフェクトが出そうな笑顔に変わる。もしかしたら本当に量子光があふれているのかもしれない。ゲンキンな奴め。


まあかわいいから問題ない。


###


──────────────────────────────────────


妹って可愛いですよね。

はい。自分は大好きです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る