過去姉
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「──とすると、やはりこれは……」
「ああ、量子を貯めておくものだろう。しかし、ここまで小型化が進んでいるとはな。やはり侮れないよ」
「そうですね。これはまだプロトタイプですが、量産化に成功すると適性の無い者でも──」
今お兄ちゃんは、持ち帰った資料について報告している。
ただの戦闘員の自分には何を話しているのかよくわからないけども、技術士官でもあるお兄ちゃんは廣田隊長と仲睦まじく検分している。
そう。仲睦まじく、である。
廣田隊長はお兄ちゃんのことを特に気に入っている、と思う節が少なからずある。
第二隊に来る重要な任務には必ず入れるし、廣田隊長が不在の時の第二隊の指揮権はほぼ必ずお兄ちゃんに渡す。そのくせ休暇はしっかり取らせるのだ。
「──ということで、この資料は第一研究科に送る予定だ。調査報告は後日こちらに回されると思う。以上だ」
話が終わったらしい。
「では失礼します。玲那」
「はい。失礼します」
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私は──廣田
三神隼斗は物分りがよく信頼できるが、それだけだ。
別に、私情によって特別扱いしているわけではない...つもりではある。
まあでも、玲那は
また玲那とちゃんと話す機会を逃してしまった。
四六時中、いつ見ても隼斗と一緒にいるので、なかなか切り出せずにいる。
もちろん個別に呼び出すことはできるのだが──いやそうするべきなのだろうが、どうも気が進まない。
私は玲那を、彼女がDAATに入る前から知ってる。
いや、玲那は特に重要な人物というわけでも有名人というわけでもない。
玲那は──廣田
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5年前に起きたロンドン崩壊テロで当時住んでいたイギリス連合は大混乱に
身寄りのなくなった私は母の兄のところに引き取られた。
その後
フランスに対し宣戦布告し、第四次欧州連合間戦争が
私はおじさんの紹介でDAATヨーロッパ支部に移住し、量子適性があったためそのまま入隊。
表の世界でMIICが世界を呑み込んでいくのを見ながら、DAATとして
それから3年間、働きつつもやはり麗奈のことがずっと気掛かりだった。
生きているのだと信じつつもやはり死んでしまったのではと。
1年前、新規入隊者名簿に
他人の空似なのか、名前を変えているのか──それとも
いても立ってもいられず、人事課に自分の部隊への配属を希望した。
配属手続きや、他の任務をするにも麗奈のことで頭が一杯のまま3日が過ぎる。
そしてようやく着任式の日となった。
ブリーフィングルームに集合し麗奈の自己紹介を聞いた時に、私は全てを察する。
「
以降これまで、柊は真実を打ち明けられないまま今日まで来てしまっている。
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