第6話 別れ
魔王城を後にしたアルトとクリスは手を繋ぎながら歩く。
「どこに行きますか?」
クリスの質問にアルトは自身の胸元を見つめる。デバルトスが消えたと同時に胸の証は消えていた。勇者の対となる魔王、魔王の対となる勇者。その言葉は正しかったようだ。
「とりあえず勇者の儀をなくすように伝えないと。父さんと母さんの遺言だし」
デバルトスとアルミスの墓は魔王城の裏庭に作った。デバルトスの墓には彼の剣を備え、アルミスにはクリスのチョーカーを供えた。それが供養になるかは分からなかったが、アルトとクリスが二人を忘れないためのお供え物だ。
「じゃあ、その後は旅ですね」
クリスが数歩前に駆けて振り返る。一人の王に伝えたところで、世界中で勇者の儀は行われている。魔王討伐の報告は伝わるだろうが、儀式は続いてしまうかもしれない。
「確かにそうだね。父さんのことをみんなに伝えなきゃ」
「そうですね。私エステル王国とここしか知りません。世界をもっと見たいですよ」
一緒に来るのかと言いそうになって、アルトは口をつぐんだ。一緒に来てほしいのは彼の方なのだ。
彼女がそう望むのなら一緒に自由に生きても良いのかもしれない。アルトはデバルトスの最後の言葉を思い出しながらそんなことを考える。
父さんがくれたこの自由を。
アルトはクリスの手を取って、力強く一歩踏み出した。
魔王直伝!これだけやれば勇者をやめれる七つの大罪 書三代ガクト @syo3daigct
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