昔話をしてあげましょう。

あるところに可愛い女の子と卑しい魔女が森の奥深くに住んでいました。女の子は小さい頃から、周りの人からチヤホヤされて生きてきました。容姿や学力、運動神経。何をとっても人より秀でていた子でした。だからといって、それらを鼻にかけることは一切しませんでした。ことわざにもあるように、「出る杭は打たれる」。人は自分とは違う者、秀でているものなどを排除しようとすると言うことを知っていたからです。このことを教えてくれたのは卑しい魔女でした。女の子はその教えをとても理にかなっていることだと考えました。だからこそ女の子は綺麗な仮面を被り、綺麗な言葉を並べていき常に綺麗でい続けることにしたのです。それは全て、魔女のためにやったことでした。


魔女は広いお城で暮らしていたので住まいはとても立派でした。何不自由にない暮らしです。

お城の中で、魔女は毎日のように踊っていました。

頭に響くような甘美な声で唱えられる、

魔法がかけられた言葉たち。

華麗に舞う腕の周りには、

蝶のように浮かぶ置物たち。

オーケストラの演奏のように奏でられる美しくも不快なメロディー。

魔女にかかれば造作もないことです。 

魔女は踊り疲れると、女の子に向かって必ず

優しい笑みを浮かべてこう言います。

「綺麗な花には棘がある。だからこそ、その棘を隠し通さなければならないわ『能ある鷹は爪を隠す。』って言うでしょ?あなたもそうなりなさい。」

綺麗な声で刃を向け。優しい笑顔で刺し殺す。 光のない瞳は女の子を映して逃さない。 


魔女は綺麗で醜くも美しい華を育てたのでした。


魔女は知りません。自分が育てた華が毒を持っていることを。魔女は知りません。その毒が猛毒であることを。

魔女が棘に触れた時、華は初めて美しく輝き、それと同時に枯れたのでした。

枯れてもなお魔女の魔法は解けません。


それでも華は今日も誇らしく咲いています。


魔女は果たして奇麗な華を育てられたのでしょうか?

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