贈り物
設定したアラームの時間よりも早く目を覚ます。
ため息をつきながら起き上がり、顔を洗う。
何もやる気が起きず、それでも何も考えたくもなくて、漫画や本を読み漁んだり、テレビを眺める毎日。
朝日を眺めて思うことはいつも同じで
(あぁ、今日も一日が始まったな。)
しかなかった。
目を輝かせながら毎日を過ごし、何にでも興味を示し、好奇心旺盛に動き回っていたのはいつだっただろうか。朝を待ち遠しく感じ、朝が来るたびに明るい気持ちになっていたあのこどもはどこへ行ったのだろう。
そんなくだらない疑問ばかりが頭をよぎる。
その度にあの日常を思い出しては絵を描く。
昔、いつもこどもに寄り添い、青や紫、時には赤いお花、丸い形のスタンプ、愛がこもった言葉たちを、こどもには受け止めきれないくらい、たくさんくれた人がいた。
でも、その人はたくさんのものをくれる替りにこどもがこどもであり続けることを良しとしなかった。こどもを大きな力で無理やりおとなへと成長させのだ。その人はこどもを正しくするために、抗うことやわがままを一切許さなかった。
こどもは次第に言葉を飲み込むようになり、気づけば大人になっていたが、大人になっても受け止めきれないくらい沢山のものを貰った。
そんなある日、その子は田舎の祖母の家に引き取られることとなった。
祖母の家で少しずつ大人は子供へとなったが、そこから成長せずにいた。
お花は枯れて無くなってしまったけれど、スタンプと言葉は残ってる。
あの人がくれた贈り物はずっと残り続けると同時に現実を突きつけた。
贈り物の存在を忘れるように。それでも、きちんと残しておくように。私は絵を描き続けていた。
いつか描かなくてもいい日が来て欲しいと切実にいながら、眠りにつく。
今日も明日も明後日も、きっと私は光の宿ることのない瞳で朝日を睨み続ける。
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