探偵社の鬼

「たっだいまー!!」

「あっ、お帰りなさい。社長、乱步さ、、ん゛っっ!?」

帰ってきた二人を見た敦は目を疑った。赤鬼がいる。

「見てよ~、節分フェアとかで鬼の面貰っちゃった!」

面の中から乱步が顔を出す。

「社長、買い出しありがとうございました。お疲れのようですが大丈夫ですか…?」

国木田の言葉通り、福沢の顔には疲労感。

「大丈夫だ、乱步の子守には慣れている…。豆を買ってきたから豆まきでもするか。」

社長の持つ買い物袋にはたくさんの豆。

「わぁ、いいですね!皆さんでやりましょう。」

目をキラキラさせた賢治の声で豆まきモードになっていく探偵社。

「わ~い!!じゃあ鬼役は社長ね!」

乱步の言葉に凍り付く一同。

「ちょっ!!!それはダメですよ、乱步さん。」

「そうですよ!社長に向かって豆なんて投げれないです!」

「え~、でも鬼役は一家のお父さんの役目でしょ?」

「いや、ここはじゃんけんとかで…。」

「も~、皆そんなに鬼役やりたかったの?しかたないなぁ。」

少し違う解釈をされた気もするが、何とか社長ルートを回避し、じゃんけんをすることに。


――数分後――

国木田は赤鬼の面の中でさらに赤く赤面していた。

「くにき、んん゛っ、鬼さんに豆を投げられるなんて光栄だねぇ。」

心底楽しそうな笑顔を浮かべている太宰。この後二人はまた荒れそうだなぁと思いながら敦も豆を準備する。

「本気でやっていいの?」

鏡花ちゃん、目が怖い。と思ったが楽しそうなので水は差さないでおく。

「皆もう始めるよ!よ~い、スタート!!!」

そうして意外とノリノリな乱步さんのかけ声で武装探偵社豆まき大会は始まった。


「が、がおー!!」

謎の声を出しながら向かってくる国木田鬼。え?と思ったのも束の間、豆の集中砲火を浴びる国木田。

「いっ、いてっ、いt、う、うぉ、ちょ、」

喋ることさえままならないほど豆が飛んでいく。横を見ると、賢治が凄い量の豆を規格外のパワーで投げている。

「ちょっ、賢治君!?え、強すぎない?」

「敦さんも投げてますか?鬼は外~、福は内~ですよ。」

「いや、うん、そうなんだけど。」

どうしたものかと慌てる中、反対側からも怪しい声が。

「仕事は外~、酒は内~。」

太宰だ。怠惰な先輩らしい口上だ。

探偵社らしい豆まきだなと半分呆れつつ、敦も恐れながらも豆を投げさせてもらった。


しかし豆まき終了後、敦は赤くドット柄に染まった国木田の顔が見れなかった。その横で

「すみません、おなかが減っていたんです。」

と許されるのかよくわからない謝罪を口にする賢治。

「んぁ~?治してやろうかぁ~?」

酔っ払いながら鉈を取り出す与謝野。先程まで豆まきには参加せず、豆をつまみに酒を飲んでいたのだ。

「あらお兄様、こんなところに豆が…♡」

「ちょっと、ナオミ!!そんなところ入ってないよ!」

いつも通りの谷崎兄弟。

さらに太宰が酒を持ってきて、大人組が飲み会を始めてしまった。

――結局いつも通りなのだ。それでいい、それが幸せなんだと知っている。――




酒も進み、夜も更けてきた頃、

「節分って鬼は外~っていうけど、鬼を内に入れて仲間にするのが一番強いよね。」

太宰が放った一言に

「へぇ~!!!じゃあ、このドット柄の鬼も内に入れてくれるんだな?仲間になる気はないが良いんだな?」

国木田鬼が飛びかかっていた。


いつもどおりだ。







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