第13話 マリンスノーのお城
「これでだいぶ絞り込めたね、中央左下のマップが怪しいね」
何度目かの大波をやり過ごし、三人は埋めたマップを表示させている。今のところ、スタート地点はほぼすべて埋まっている。【RUN】がスタートしてまだ15分ほどで、まだゲームクリアしている人は見られなかった。
「普通の【RUN】だったらもう早い人だったら終わっているよね」
ひなたが言うのももっともだ。【RUN】だけじゃない、他のルールでもたいていの場合15分もあればクリアできる。去年の地方大会はもう一番抜けが出ている。
「何人かリタイアも出ているし、もう半分も残っていないんじゃないかな」
「ガードスキルで逃げ切るのが一番なんだろうけれど……もう、そんなに残ってないよな」
尚也のステータスを見ると、ガードスキルはもう2つしかなく、早く乗り切らないといけないと龍之介は思った。
「なんだか波が来る感覚も短くなってきてるし……」
そうだった。
ひなたが言うように、波が来る感覚が少しずつ短くなってきている。これは波の発生源に近づいてきていることの表れだ。
「でも、特定できたから行こう」
「え、もうできたのかよ!?」
「あのねぇ、【RUN】は時間との戦いだって、龍之介はいつも言っているじゃないか。だったら、無駄な探索時間を削っていくべきだよ。だから、次はここに行こう」
そう言って尚也が示した場所は行きどまりだった。
「なんでだ!?」
「波をこれでやり過ごすんだよ。ガードスキルは後二回しか使えない。だったら、波が流れていく場所を考えて、被らないようにするしかない」
ぴこーんと龍之介の頭に豆電球が灯った。そういう事か。
(やっぱり、サモンバディーズはチームじゃなきゃな)
「こっちからのルートが間違いなく進めるよ! 二人とも急いで!」
ルートを見たひなたが先陣を切る。ひなたはこういう時の思い切りがいい。黒猫の後ろを追いかけていくと、頭上からアナウンスが響いてきた。
『第一位グループゴールしました』
もういつゴールしてもおかしくない時間だ。けれど、改めて一番抜けのチームが現れると焦りだす。
「なんだとーーー!?」
「早く行くよ!」
走り出す三人のほかにも、多くのチームがゴールに向かって走り出す。その間にも、続々とチームが抜けていく。
右に左に曲がりくねった道を走っていく。【RUN】の構造は入り組んでいるけれど、ひなたの先導のお陰で慎重に進むことができた。
一つ一つの道を塗りつぶしていくと、目的地に着いた。
「え?」
「ここであってるはずだよ。これ以上進める所が無い」
ひなたがあっけにとられるのも無理もないなぁ、と龍之介は思った。だって、目の前には壁しかないのだから。
これ以上進める所が無い、と尚也が言うのも分かる。
「これ……データーが無いわよ……」
「データーが無い?」
「ほんとだ! 二人とも、今すぐマップを見て!」
そう言われ、龍之介がマップを広げる。
「な……なんだ……これ………!?」
マップが黒くなっていく。はっと後ろを振り返ると、レンガの壁が変わっていく。そしてそのままこちらに迫ってきている。
「うわうわうわ!!??」
「ブレイク! 今すぐブレイクスキル―――!!」
ひなたが龍之介を壁に押しやる。当の龍之介は目の前が真っ暗。ぐるぐるした視界の中で、龍之介は刀を握る。
「ブレイク!!」
刀の先から白い光が放たれる。けれども、びくともしない。
「もう一回!」
パリン。
貯めたブレイクスキルが音を立てて消えていく。それでも、背後から襲って来る壁から逃げるには前に進むしかない。
パリン。
パリン。
「一点に集中させる!」
剣から放たれる波動が壁にぶつかっていく。一回放つたびにヒビが広がっていく。一回ではだめだ。
「尚也! 力を合わせていくぞ!」
「あ、ああ!」
「私も行くよ!」
三人分のブレイクスキルを合わせると、ガラガラと音を立てて壁が崩れた。そしてその向こうにゴールと掲げられた門が現れる。
「よっしゃ!」
龍之介はたたっと駆けだし、門をくぐり抜ける。すると、ふわりと体が宙に浮かんだ。
ふわふわと浮かんだ視線の先に小さな光が漂っていく。まるでスノードームの中にいるようで、不思議な気分になってきた。
「きれい……」
「これってマリンスノーだよ。海の中に現れる現象だ!」
目の前に急に表示された画面には【ゴールしました】という文字。
「よっしゃ!」
龍之介たちはゴーグルをとり、手を叩きあった。これで第一回戦は突破することになった。
「まずは一回戦だね。次は午後の試合だ!」
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