二人はラブラブ

@gamacchi

第1話

 私の名前は古谷朱音(フルヤアカネ)、姫路市に住む高校3年生だ。

 自分で言うのも何だけれども、中学生からかなりモテていた。

 告白は20人以上にされてるし、告白はしないけれど、私を好きなことがバレバレの男子は多かった。

 可愛くて、頭も良く、バストはDカップ、イケメンもブサメンも分け隔てなく接するところが気に入られているのだろう。

 高校に上がると、モテる私を疎ましく思う女子も出てきたが、イジメを受けることはなかった。

 それは、私が誰の告白に対してもオッケーを出さず、恋愛に興味がないふりを続けていたからだ。

 この前なんて、学年一のイケメン、松井康生の告白を断り、ちょっとした話題になったりした。

「ねぇ、古谷さんって、男の子に興味とかないの?」

 松井くんを振ったあと、クラスの女子、高橋愛に聞かれた。

「恋愛ね〜、私どっちかっていうと、女の子の方が好きかな。愛ちゃんならキスしていいよ」

 私がそう言うと、

「あ〜、いや〜、私はそっち系じゃないから……あはは、あはは」

 って、逃げていった。

 誰があんたなんかとキスするもんですか。

 と思ったが、もちろん口には出さなかった。

 

 実は私にはちゃんと彼氏がいるのだ。

 そう、小学6年生から想いを寄せていた彼。

 彼の名前は安部聡(アベサトシ)。

 中学3年生の時にどちらからともなく告白し付き合うことになった。

 彼は、十分イケメンの部類で、女の子にも人気がある。

 誰よりも優しく、気遣いが出来て、年上の不良連中から私を助けてくれた彼を、私は好きになったのだ。

 中学3年になったばかりの時、「古谷は胸の発育がいいし、可愛いから、男はいやらしい目で見るんだよ。気をつけなきゃダメだぞ。今はスマホで隠し撮りも出来るし、超小型の隠しカメラもある。どこで盗撮されるか分からないんだから」

 そう言われたので、

「安部くんもそういう目で私を見たりするんだ?」

 って言うと、

「そうだな〜、古谷だけじゃないけど、たまに胸に目がいくことはあるよ。あっ、コイツまた大きくなったな〜とかさ」

 隠そうともせず、彼はそう言った。

 私は慌て胸を隠す。

 顔が赤くなってるのが自分でもわかるのだ。

「安部くんも、いやらしいとこあるんだね。ただの真面目くんかと思ってたわ」

「俺だって健康な男だからね。可愛い子には素直に目がいくよ。

だからこそ、他の男子が考えてることがわかるんだ」

 成る程ね。


10月に入ってすぐ、昼休みに彼に聞いてみた。

「安部くんはどこの高校受けるの?」

「あぁ、俺?……実は俺引っ越すんだ。中学はここで卒業するんだけど」

 え?な、何よそれ。

 私は動揺を気づかれないように、

「遠いの?」

 と、聞いた。

「近いと言えば近いけど、神戸だから、この近くの高校には通えない距離かな。早起きは苦手なんだ」

 寂しそうに彼は言った。

 それを聞いた時、私の中で、声がする。

『何してんのよ、告白する絶好のタイミングじゃない。安部くんだってきっと朱音のこと好きなんだよ……さぁ早く』

 そう言われても、もし振られたら最悪だ。

で、私が言ったのは、

「もう少し話したいから帰ったらLINE電話してもいい?」

 だった。

「あっ、別にいいけど」

 彼はそう言った。

 程なくして、チャイムが鳴り、私たちは席に戻った。

 席に戻ってからも、彼のことが頭から離れない。

(引越しちゃうんだ、完全に会えなくなるって距離じゃないけど、付き合ってもないのに会いにも行けないし、会えないのと同じだよ〜、絶対やだ〜)

 

 学校が終わったら、私は素早く教室を出て、帰り道の途中で彼に、

「電話出れるようになったらLINEしてね」

 とLINEを送った。

「あと15分くらいで出れると思うよ」

「待ってるね」

 送信してから、急いで家に帰った。

 

 ちょうど15分後、

「今から大丈夫だよ。こっちからかけようか?」

 と、LINEが来た。

 私は返信せずにそのまま電話をかけた。

 


もしもし、古谷です。

安部くん、帰るの早かったんだね。

安部くんの家までだと、普通ならあと10分はかかるよね?


古谷さん、チャイムが鳴ったら、さよならも言わずに飛び出していっただろ?

追いかけようと思ったんだけど、ひょっとして電話のために急いでくれたかもって思ってさ。

久しぶりに全力で走ったよ。

で、当たってたかな?

 

うん、当たってた。

私、寂しいよ、同じ高校ならってちょっと期待したんだけど……


僕だって、古谷さんがK高校を受けるの前から知ってたから、K高校を受ける学力を身につけるために必死だったんだ。

だけど、老婆ちゃんが寝たきりになっちゃって、父さんが神戸に引っ越して面倒みたいって、相談してきたんだ。

僕も、老婆ちゃんには色々面倒見てもらったし、嫌なんて言えなくて。


そうだったんだ。

(っておい、今大事なこといったぞコイツ)

え?私と同じ高校に行くために……頑張ったの?


え?僕、そんなこと言ったかな?


言ったじゃん。絶対言った。

それって、その、私のこと……好きだったり、するのかなぁ


さぁ、どうなんだろう。よくわからないんだけど、すごく気になる存在ではあるかなぁ。


ずるい言い方だよね。


古谷こそ、同じ高校なら良かったのにって、さっき言ったよね?

それって、僕のこと好きってことなのかな?


さあ、どうなんでしょうねぇ。


意地悪だなぁ。じゃあこうしよう。

あと2分で4時になるから4時になったら、せーのー、で好きか普通か言うのどう?まぁ、嫌いはないだろうから省くんだけどね。


いいよ。絶対だからね。


 そうこうしているうちに4時が近づく。

 4、3、2、1、0、せーのー、

「好き」

 言ったのは朱音だけだった。


え?ちょっ、ちょっと何よ〜、私だけに言わせて、安部くんズルい。


は、は、は、引っかかった。

恋愛は惚れた方が負けなんだよ。

僕は、負けず嫌いだからね。


何それ、全然理解不能よ。

で、安部くんはどうなの?

それを言ってよ。


僕は、古谷さんのことだけ、大好きだよ。小学生の時からずっとだよ。


小学生?何年生の時?


5年生の二学期かな?きっかけとかは忘れちゃったけど、気づいたらすごく好きになってた。


それなら安部くんの負けね。

私が安部くんを好きになったのは6年生になってからだもん。


え?そうなっちゃうんだ。


うん、そうなるんだよ。でもさ、どっちが先とか、実際、関係ないよね?お互いの好きって気持ちが大事だと思うし。


そうだね。

じゃあ、今日から古谷さんは僕の彼女でいいのかな?


うん、絶対振らないでよね。


古谷さんが浮気しない限りは振ったりしないよ。


浮気?その心配はないよ。

私の安部くんへの想いは昨日今日の話じゃないんだよ。

4年間、ずっと安部くんだけ見てきたんだから。


古谷さんが他の男子の告白を断ったって、たまに耳に入ってきてたんだ。仲には超イケメンもいたりして、断ってたのが僕の為だって分かって、今めちゃくちゃ嬉しいよ。


でしょ、でしょ?

こんな可愛い子をゲット出来たんだよ。感謝してよね。


はい、感謝しますとも。


そうそう、安部くんは高校 はどこ行くの?


N高校ってとこ。

数学のレベルがめちゃくちゃ高いんだ。

大学へは行きたいしね。


成る程ね。当然共学だよね〜、

心配だなぁ〜。


え?さっきの浮気の話かな?

それなら、受け売りで悪いけど、僕は5年間、古谷さんだけを見てきたんだよ。

それにさ、古谷さんより、可愛くて、胸も大きな女の子なんて、そうそういないよ。


え?やっぱり話がそっちに行くんだね〜。これだから男ってやつは。


は、は、は、こればかりはどうにも……


言っとくけど、私は軽い女じゃないから、期待しちゃダメよ。

結婚したら、好きにしていいけど。


大丈夫だよ。僕はね、彼女は自分が守らなきゃって思ってるんだ。

守らなきゃいけない奴が手を出したらダメだろ?


うん、安部くん信じるよ。

でさ、学校ではともかく、名字で呼ぶのってやめない?

やっぱり、彼氏彼女なんだから、名前で呼びたいな。


だね。じゃあ、二人の時は、朱音と、聡だね。


うん、あっ、私買い物行かなきゃいけないんだった。


うん、じゃあまた明日学校でね。


あっ、しばらく、付き合ってるのは内緒にしない?

冷やかされるの好きじゃないんだ。


いいよ。

じゃあ学校では普通に友達ってことで。


ん、じゃあまた明日ね。


そう言って電話を切った。

『おめでとう朱音』

 心の声が聞こえる。


続く

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