第3話 南くん

朝、目が覚めると見覚えのある天井、壁、家具やインテリア。

姉貴が学校にいく準備をしていて母さんは朝食を作っている。

おれは昨日の出来事が夢じゃないことに喜びを覚え

「おはよう」といった。

「おはよう。珍しく早起きやね。」と母さんが言う。

「私、朝練あるからご飯いらない。」と姉貴が言い、出ていった。


「ノハルも着替えてご飯食べなさい。」と母さんが姉貴の分の朝食もおれの皿に移して言う。


おれは学ランに着替えて母さんとご飯を食べ始めた。


「母さん、毎日ありがとう。産んでくれてありがとう。」

今まで親に言えなかった一言。

たったその一言も言えなかったおれは、二回目の人生でその一言を言った。

「なに?いきなり?昨日からおかしな子だね。早く学校にいきなさい。」と母さんは言ったが、嬉しそうな顔をしていた。


「いってきます。」といい、おれは、家をでて学校へと向かう。




中学校は学年5クラスあり、おれはその5組だ。


黒板に教卓、きれいに整列した机に椅子、後ろの黒板には卒業まであと40日と書かれている。

懐かしい顔も。

懐かしいなぁ、と思いながら扉のまえに立っていると、背中をドン!と押されて

「邪魔」と言われた。

それは学年のヤンチャなグループのリーダー的な存在の南くんと斎藤くんだった。

おれは懐かしくて「おはよう。」と言い、南くんの肩にてをかけた。

「触んな。」と南くんはおれの手を振りほどいて、睨み付けてきた。


おれはその反応で思い出したが、そのグループは一年に一人、いきなり無視されだし、いじめを受けるという、伝統みたいなのがあった。

中2の年がおれというわけなのだが。

おれは逃げて半年ぐらい不登校になっていたのだ。


先生や親は不登校になったおれを心配してくれたのだが、

当時のおれは恥ずかしくて不登校の理由を話せずにいた。

それすらも懐かしくてにやけてしまった。


そんなおれを見て南くんは怒り、怒鳴りだした。

「おい!キモい顔してんじゃねぇぞ!」胸ぐらをつかみ、おれを壁へ押し付けた南くん。

その声に集まるかのようには、ほかのクラスのヤンチャグループたちが集まってきた。


懐かしい顔いっぱい!しかもみんな若い!

おれはそんなことを思いながら、にやけがとまらなかった。

そんなおれを見てみんな苛立ちの顔をしている。

「おまえほんとキモいわ。殺すぞ。」と南くん。

「きもっ」、「死ね」、「やれ!」と周りからは野次が飛んでいた。


「てか、なんでおれって無視されたん?なんかした?なんかしたなら謝る。ごめん、、」

とおれは南くんの目を見て謝った。

南くんは胸ぐらを掴んでいた手を離して「マジでキモい」といい後ろを向いた。


っと、次の瞬間。

南くんは振り返りそのままの勢いで顔面にパンチをしてきた。

おれは反応がとれずに、もろに顔面にパンチを喰らった。

おれの体制が崩れて、その瞬間におれに馬乗りになろうと南くんが詰め寄ってきたが、そのに先生がきてその場が収まった。

クラスの女子が呼びにいったのだろう。


そして、朝のホームルームが終わり、おれは2組の西川くんのところに来ていた。

西川くんは中1のときにグループからはずされた人だ。

いまは、ヤンチャグループにまたもどっている。


「2年前、ひどいことしてごめん。止めれなくてごめん。助けてあげられなくてごめんなさい。」

おれは西川くんに謝罪した。


西川くんはなにも言わずに教室からでていき、ほかの生徒はおれを見ていた。

他の生徒の視線を気にせず、次は、4組の峯くんのところに向かった。


峯くんは中3のときの被害者だ。

おれもその時は学校にきていて峯くんが被害にあっているのをしっていたが、知らないふりをした。

そのことを峯くんに伝え謝罪した。

すると、峯くんはおれがなんでグループから外されたのかを話してくれた。

「中2のとき、ノハルってなつみちゃんと仲良かったじゃん?」

なつみちゃんは中2のとき同じクラスで席が隣だったのでよく話していて、特別に仲がいいというわけでもなかったが、グループのひとりで3組の山下くんが好きな女の子だ。

「それに山下が怒ってノハルが外されることになった」と峯くんが話してくれた。


それだけ?

てか、それってただの嫉妬じゃん!

と、思ったが「そっか、話してくれてありがとう」と言い、おれは5組へと戻った。


チャイムが鳴り、一時間目の授業がはじまった。

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