第31話 決勝戦

知らない天井だ


魔力を使い過ぎたせいで身体がダルい

フルバーストを使ったから筋肉も悲鳴をあげている


「おつかれさん」


師匠がいた


「惜しかったな」


「惜しくなんかないです、完敗しました」


言葉にすると実感する

負けたんだな

師匠に出会って1年以上修行をしてそれなりに強くなったつもりだった

でも負けた、完膚無きまで

勝てる気がしなかった


「悔しい…悔しいですっ!」


涙が零れる


「ああ」


師匠の手が僕の頭を撫でる

暖かくてデカい

なんて安心出来る手なんだろう


めちゃくちゃ泣いた

初めて出会った時も泣いたがあの時の涙とは違う、悔し涙だ


僕が落ち着いてから師匠は大会について話始めた


第2試合のガルムvsロザンは僕の予想通りロザンの圧勝

第3試合のクレアvsマインは拮抗した勝負をしていたがマインが油断したところを突いたクレアが勝利

第4試合のリヒトvsシュバルツはシュバルツが魔法のゴリ押しで勝利

第5試合のカイトvsロザンはロザンに何もさせずカイトが圧勝

第6試合のクレアvsシュバルツはシュバルツの猛攻にクレアが食らいつくがあえなく敗退


ということで決勝戦はカイトvsシュバルツとなった

丁度これから決勝が始まるということで見に行くことにした


「少年の部決勝戦はーカイト選手対シュバルツ選手!圧倒的な強さで相手になにもさせて来なかったカイト選手と圧倒的な魔法で相手を蹂躙してきたシュバルツ選手どちらが勝つのかー!?」


「お前も瞬殺してやるよ」


シュバルツは見下した表情でカイトに言う


「驕りは何も産まないよ」


諭すように言うカイトにシュバルツはイラついた表情になる


「ぶっ殺す」


「それではー試合開始っ!!」


開始の合図と同時にシュバルツが魔法の竜巻をカイトに放つ、カイトはそれを最小限の動きで躱す

シュバルツは続いて右手で炎の弾を放ちながら左手を上にあげる

左手には魔力が集まり大人2人分もありそうな巨大な炎の玉となる


「そんなの打ったら人が死んじゃうよ」


カイトは炎の弾をかわしながらシュバルツに告げる


「ぶっ殺すって言ってんだろ!死ねやー!」


魔力を込め終えたシュバルツは炎の玉をカイトに放つ

スピードは遅いがデカい為に逃げ場がない

観客からは小さな悲鳴があがる


カイトは避けるのを諦め両手を前に出し円を描く

炎の玉がカイトの両手に触れる

普通なら爆発するか触れた物が炎上する

だがそのどちらでもない、カイトが円を描く度に炎の玉が小さくなる

そして最終的には消滅した


「あらぁ、やべぇな相当な遣い手だ」


師匠が冷や汗を出しながら呟く


「そんなに強いんですか?彼」


「俺でも勝てるか分からん」


師匠が衝撃的な事を言うが実際に戦った僕はそこまで驚かなかった

と言うより妙に納得してしまった


「お前っ!何をした」


さっきの魔法に相当自信があったのか焦りながらシュバルツは吠える


「それは秘密だよ」


無表情で告げるカイトにシュバルツがブチギレる


「澄ました顔しやがってよぉ!この大会で優勝して俺が最強だって認めさせなきゃなんねーんだよ!!つーわけで死ねっ!!」


シュバルツの右手に風が集まり左手に炎が集まる、両手を合わせると炎のが青くなる

青い炎は渦を巻きながらカイトに向かう

が、次の瞬間にはカイトの姿はない


「終わりだよ」


いつの間にかシュバルツの背後にいたカイトはシュバルツを気絶させた


「少年の部優勝はー……カイト選手だー!」


司会の一言で大歓声が巻き起こった

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