第2章 魔大陸

第19話 出会い

僕は走る


次の日も走る


その次の日も走る


お腹が減る

それでも走る


足が痛い

それでも走る


僕のことを誰も知らない所へ行く為に


走って

走って

走って

走った


何日間走ったんだろう

どこまで来たんだろう

もう走れない


僕は気を失った



目が覚めるとそこには知らない天井…

はなく、星空が広がっていた


身体が痛いし重い

起き上がろうにも上手く身体が動かない


「おっ、起きたか」


男の人の声がする

180cmくらいの細身の男性が座っていた


「だ…れ…?」


上手く声がでない

喉も乾く


「俺の名前はライム森の中で倒れてたお前さんを見つけた」


「こ…こ…ゴホッ」


やはり上手く声が出ない


「無理に喋るなこれを飲め」


ライムさんから貰った白湯を飲む

白湯が身体中に染みて生き返る

ほんとに生き返るという表現が正しいく思う

重かった身体も軽く感じる


「ここは…どこ…ですか?」


少し声が出た


「人類大陸のイーヴァストールにある森だ」


無我夢中で走った僕は知らない間にノースリーブから出ていたらしい


ここには僕を知っている人は誰もいない

そう思うと安心して眠気がやってきた



*side ルーカスの母


私の息子はルーカスという


ルーカスはいつもいい子だった

片親だから決して贅沢な生活はさせてあげれなかったがその事で文句を言うことはなかった


反抗期らしい反抗期もなかった

かと言って引っ込み思案な訳でもない


気になるところと言うと1度も友達を家に連れて来たことがないくらいだ


5歳くらいの時にカノンという女の子の友達が出来たと嬉しそうに言っていた気がするが

いつからか話を聞くことはなくなった

当時の私は忙しくてちゃんと話を聞いてあげる事が出来なかった


学園に入学してからも変に荒れることもなく成績だってめちゃくちゃ悪いという訳ではなかった

寧ろ世界と歴史に関してはかなり良かったと思う


いつからかルーカスの様子がおかしくなった

靴がボロボロになっていたり

服が汚れていたりすることが多くなった

ルーカスに聞いてもなんでもないと言う


今考えてみればそれらはイジメを受けていた証だったのだ


当時の私は忙しさを言い訳にして

ルーカスときちんと向き合って話をしなかった


そのツケが爆発してルーカスが不登校となる


あんなに明るくて元気だった子が部屋から全く出なくなった

私や学校の先生がいくら呼びかけても返事すらしない


それもそうだろうまだ10歳の子供が誰にも相談も出来ず毎日毎日イジメを受けていたのだ

塞ぎ込んでしまってもしょうがない


1番近くに居たはずの私が力になれなかった

私がルーカスをあんな風にしたと言っても過言ではない


私には悲しむ権利なんてないがそれでも今まで通り仕事を続けることなんてできなかった


そんな時彼と出会った

優しく私を支えてくれて、ルーカスの事も考えてくれた

そんな彼に私は惹かれた


彼とならやり直せると思ったし

ルーカスの為なら別の都市へ引っ越してもいいとさえ言ってくれた


これでもうルーカスに苦労をかけることなく

愛情を注いであげられる

そんな想いでルーカスへ再婚の旨を伝えた


ガチャと扉が開く

ルーカス久しぶりね、と抱きしめようと思っていた


だがどうだろう

ルーカスは走って出ていった

一瞬見えたあの子の顔は全てに絶望した表情をしていた


結局私はルーカスの事をなにも分かっていなかったのだ

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