高木 瀾(らん) (5)

「で、今、試合やってるウチの自警団の次鋒は『イザナミ流』って民間信仰系の流派で……使ってる用語や呪文からして陰陽道系ぽいんだけど、江戸時代には陰陽道の宗家だった土御門家から陰陽師の免許をもらってなくて、それどころか、二〇世紀末に陰陽師が出て来る小説や映画やマンガがメジャーになるまで『陰陽師』『陰陽道』って単語そのものを良く知らなかったらしい」

「へぇ……」

「で、陰陽道で云う『式神』の事を『式姫』って呼んでるそうだ。今、飛び交ってるヤツがそれ」

「ふうん……」

「そして、相手は『護法童子』を使役する術が得意なヤツ。今、目の前で起きてんのは、合わせて二〇か三〇の『式姫』と『護法童子』の戦いな訳よ」

 関口は、そう解説してくれるが……。

「悪い。気配っぽいモノは感じられるが……見えない」

「……」

「『見える』ヤツにとっては、凄い光景なんだろうけど……私は見えないし、カメラにも映らない」

「……えっと……」

「ネット配信だと……ブーイングの嵐だよ……。どうしよう、これ……」

 そう言ったのは、撮影チームのリーダーの久留間さん。

 ネット配信とCATVで「魔法使い」同士の5番勝負を生中継する事は決っていたのに……肝心の撮影チームに「第2試合は、どう考えてもカメラ映えしない戦い方をする者同士」と云うのは、今日になるまで伝えられてなかったらしい。

 撮影用のドローンに搭載されてるカメラに映っている……ついでにネット配信されている映像の中では……2人の女性が距離を取って、印を結んで、何か呪文を唱えている光景が、映し出されていた。

 試合が始まってから、今まで、ずっと……。

 だが……その時、両方の選手の表情が変り……。

「え……おい……?」

 何故か、関口が試合場に向けて飛び出して行った。

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