高木 瀾(らん) (6)

 両方の「自警団」の者達が次々と試合場に乱入し、呪文を唱え始めた。

 しかし……私には魔法的・霊的なモノは……気配ぐらいは感じられるが見えないので、何が起きてるか判らない。

「あの……変なモノが……」

 撮影スタッフの1人が手を上げる。

「何?」

「勝手に試合の様子を撮影して、ネットで生配信してるヤツが……」

「今、そんな事言ってる場合じゃ……」

「それが……その……」

 私は、そのスタッフの席まで行くと……。

「これ……合成ですか?」

「いや……判んない……」

 何者かがネットで生中継している動画には……目の前の広場の様子が映されていた。……私には見えない「式姫」と「護法童子」らしい「何か」と……その暴走を止めようとして放たれているらしい「霊力」「気」と思われるモノも含めて……。

「カメラの有る場所は判ります?」

「多分……あの辺り……」

 そのスタッフは客席の一点を指差す。

 だが……私は、ある事に気付いた。

「何ですか、この変な光……?」

 映像の中に、時折、「式姫」や「護法童子」とは関係ないらしい妙な「光」が映る。

 どうやら、その「光」の発生源は……試合場とカメラの間。

「わかんない……。レンズフレアともハレーションとも違う……」

「あと……この光の光源……どこですか?」

「えっ?」

「だって……『式姫』だが『護法童子』だからしいモノは……この光の光源の手前に居るように見えるんですけど……それ以外の、例えば選手なんかは、この光の向こう側に居るように見えるんですが……」

「あっ……確かに」

 それに……。

「久留間さん……ちょっと、これ見てもらっていいですか?」

「な……何?」

「この映像……何か……素人っぽく思えるんですか……何故、素人っぽく見えるかは……巧く説明出来なくて……」

「ちょっと待って……」

 久留間さんは、映像を眺めながら、しばらく考え……。

「無い……ほとんど無い……」

「無いって、何がですか?」

「カメラワークだよ」

「えっ?」

「カメラの向きは多少は変る事が有るけど……カメラそのものは……多分、位置が固定されてる」

「じゃあデカいカメラとか?」

「いや……多分だけど……映り方からして小型カメラの望遠モード。携帯電話ブンコPhoneのカメラだとしてもおかしくない」

「なら……客席ですか?」

「違う……撮影場所は……結構高い……あ……っ」

 謎は、次の瞬間、簡単に解けた。

 画面に映ったのは……。

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