関口 陽(ひなた) (5)

「どうよ、ランちゃん、少しは私に惚れてくれたか?」

 試合が終った後に、撮影チームのテントに顔を出して、そう言うと、ランは面白くもなさそうな顔をして立ち上がり……。

 私の胸倉を掴むと……。

「あ……やっぱり、こう云ういじり方はムカツいたりする?」

「相手を投げた時の掴み方がなっちゃいない」

「へっ?」

「あの掴み方だと指を脱臼する危険性が有る。少々、握力を鍛える必要が有るけど、こっちの方が安全だ」

 そう言って、私の服を掴んでいる自分の右手を、左手の指で指差した。

「あ……ああ、そう……。気を付けるわ……」

「おい……関口」

 えっと……まさか……。

 声がした方向を見ると、不機嫌そうな中年のオッサン……早い話が、ウチの自警団「入谷七福神」の中でも私が所属してる「大黒天班」の……まぁ、№4ぐらいである石井さんが、すげ〜不機嫌そうな顔に……って、何で、撮影チームのテントに、この人が居るんだよッ⁉

「お前の連れて来た、その『バイト』が、一体全体、どこの何者なのか、後で、ゆっくり説明してもらうからな」

「え……ええっと……その……」

「あの……ところで次の試合、どうするんですか?」

 その時、撮影チームの1人が、撮影チームのリーダーである久留間さんに、そう聞いた。

「えっ?」

「だって、聞いてませんよ。第2試合が……ここまでカメラ映えしない人達同士だなんて」

「あの……聞いてないって、どう云う事?」

「ホントに、ボク達、撮影チームは、聞いてなかったんですよ。今日になるまで、試合に出場するメンバーが誰か……」

 ランは……駄目だこりゃ、と言いたげな表情で、天を仰いでいた。

 おい、私の試合中に、一体全体、撮影チームで、何が起きたんだ?

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