関口 陽(ひなた) (7)
「な……なぁ……機嫌直してもらえた?」
「だから、バイト代分の仕事はしますよ、『正社員』様」
駄目だ、まだ怒ってる。
「最初から正直に言ってくれれば、私は断わったけど……他の誰かを紹介したんですけどね……」
「えっ? そうなの?」
「私の妹もドローン操作は一応出来て、私と違って、こう云う『祭』が大好きなんで」
「……ああ、そう……。で、昼食は中々だろ。スタッフ用の飯は、冷えた弁当じゃなくて、ちゃんとケータリングを呼んで温かいのを出すのが、ウチの方針なんで」
「でも……そのバカデカいステーキは『正社員』様だけですよね?」
「イチイチ、敬語使うな。何の嫌がらせだ?」
「いや、だって、『正社員』様には敬語を使えと言われておりますので」
「だから、何だ、その棒読み口調の敬語は?」
「何だ? と言われましても……敬語です」
「お前、人からかってる時は、大真面目な顔と口調になる癖が有るだろ」
「何の事でしょうか、『正社員』様?」
「ひょっとして、このステーキ欲しいの?」
「いや、私は牛肉は霜降りより赤身の方が好きなんで」
「え〜、もったいないなぁ……伊万里牛の最上級だぞ。日本一を何度も取った農家が育てた」
「それを……その量……」
「うん、七五〇g」
そして……十分ほど経過……。
「あ……あの……本当に要らない?」
「だから、私は牛肉は赤身の方が好きなの。冗談でも嫌味でもなくて、本当に」
「いや……でもさ……」
「大体、一口か二口で満足しちゃうほどの味の肉を、それだけ食えると思ったのか?」
「あの……じゃあ、撮影スタッフ呼んできて……」
「あんたは、喫茶店で隣の席の女の子に食べ残しのケーキ押し付けようとするキモいヒヒ爺ィか?」
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