高木 瀾(らん) (5)

「ドローンの操作画面の右下隅に識別番号が表示されてます。指示は、その識別番号で行ないます」

 撮影用のドローン操作スタッフの打ち合わせは始まっていた。

「各ドローンには衝突防止のセンサが積んで有って、他のドローンと近付き過ぎると警告が出ますが、余程、緊急の場合を除いては、ボクに指示を仰いで下さい」

 説明をやってるのは、さっき関口に紹介してもらった久留間さんだ。

「あと『正社員』の人の御機嫌が悪くなるんで、『寛永寺僧伽』や『二十八部衆』のスタッフとは、仲良くもしすぎず、喧嘩もせずでお願いします」

 学校でも体育会系の部活やサークルに入った事は無いし、私が属してる「御当地ヒーロー」の「組織」は、「組織」と云うより上下関係が緩い「ネットワーク」なので、よく知らないのだが……上下関係に厳しい組織ってのは、こう云う風通しが悪い事になるんだろうか?

「何か質問は?」

「あの、ドローンの移動とか向きの変更とかの指示方法は?」

「えっ?」

「だから、何時の方向とか、そう云う感じですか?」

「あ……たしかに、そっちが合理的だけど……みんな慣れてないんで、右とか左とか前とか後で……」

 こっちの自警団ってのは……かなりマズい組織かも知れない……。

 「東京」の中だけが活動範囲で、「外敵」は海を渡ってやって来るしか無い……だから、何とか無事で済んでるんだろうけど……。

 ……でも、どうやら、戦闘要員と非戦闘員の連携は巧く取れてないようだ。

 もちろん、この時、私は、その日の内に、あんなとんでもない事態が起きるなんて予想が付く筈もなく……。

 だから……「駄目だ、こりゃ」と内心で思いつつも……「嫌な予感」までは思い浮かべさえしなかった。

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