関口 陽(ひなた) (6)

「ふざけるな……。帰る」

 ランは不機嫌そうにそう言った。

「……久留間さん、預けてたアレ出して」

「これですか?」

「おい、ラン、これ要らないのか?」

 久留間さんが手にしてるのは……修行に行ってた英彦山のお土産「英彦山がらがら」の特別限定版。

 十年ぐらい前の子供向けのアニメに出て来た恐竜達の顔になってる陶器製の鈴だ。

「要らん。自分で英彦山まで買いに行く」

 そう行って、ランは、私達に背を向けた。

「あ、そう……ガジくんにスーちゃんにタル坊だっけ……あのお姉ちゃんは、君達の事、要らないんだって」

「うるさい」

「じゃあ、一思いに……」

 その時、振り向いたランの顔には、何かに感付いたような表情が浮かんでいた。

「おい……まさか、その子達を殺す気か?」

 「壊す」じゃなくて「殺す」か。聞いてた通り、こいつ、この恐竜のグッズに関しては言動がおかしくなるみたいだ。

「どうする? 可愛い恐竜さん達が死んじゃうよ」

「わかった……。それを含めたバイト代分の事はやる……。けど……」

「けど……何だ?」

「最初に会った時に、私に再戦を申し込んでたよな? いつやる?」

 あっ……。

「いつでもいいが、その時は……全力でやらせてもらうぞ」

 あははは……。

「わ……わかった。こっちの都合が良くなったら……日時と場所を連絡する」

「あ……あのさ……関口さん……この子……一体……?」

「ば……私の知り合いのバイトの子です。それ以外は、見ざる言わざる聞かざるでお願いします。あははは……」

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