第四話 美少女アダルトゲーム「緒刀女(おとめ)」

その後、少年AとBは、

ギリギリの成績で進級試験を通過。


平城30年(2018年)に何とか

松平学園高校への入学を果たしたのであった。


だが3年前にいた、

輝かしい未来に挑戦する

AとBはどこにもいなかった。


そこにいたのは、

お情けで内部進学を許してもらえた、

友達が少なく、

勉強も武道もスポーツも苦手な、

スクールカースト最底辺の劣等生二人であった。


そして彼らが高校1年になった年の5月。


あるアニメの放送が開始された。


それは多くのオタクナード層から

絶大な支持を受けることとなる

「緒刀女(おとめ)」という深夜アニメであった。


内容はというと、

刀を美少女に擬人化したキャラクター達が、

「異界からやってきた禍々しき者と戦う」

という筋立てであり、

個性豊かな美少女達が活躍する物語となっている。


清楚系緒刀女「カゲミツ」


お嬢様系緒刀女「トモナリ」


インテリ系緒刀女「ユキヒラ」


オラオラ系緒刀女「マサムネ」


などなど、様々なタイプの女性キャラが活躍する。


元々は成人向けのアダルトゲームであったが、

地上波アニメ化する際に、

アダルト要素を薄めたことにより、

一般にも受けるように修正。


アニメだけでなく、

ノベライズ化、

アプリゲーム化、

映画化、

実写化、

舞台化

と多方面のメディアミックスで一般ファンの獲得にも成功。


大人気となったのだ。


元祖の方のゲームシステムは、

戦闘を進めていく中で、

キャラクター達と親密度を上げていく。


そして、

親密になったキャラクター達とはセックスができるようになり、

その際の盛りだくさんのポルノシーンも、

このゲーム最大の売りとなっている。



とあるゲーム誌の分析では、

恋愛要素とRPG要素を上手く融合できたことが、爆発的人気を得た理由ということだそうだ。




そして、

この「緒刀女(おとめ)」の虜となったAとB。


彼らはアニメ放映開始後、

生活のほとんどを、

この「緒刀女(おとめ)」に捧げることとなってしまったという。


もちろん元祖であるアダルトゲームも

17歳ながら違法に入手してプレイ。


まぁこれは年頃の青少年なら当たり前の事なので、いくら

「18禁ゲームだから18歳未満はやってはいけない」

といっても、律儀に守る男子はいないであろうが。


だが、彼らAとBは度を超えていた。


毎日夜中の三時くらいまで起きてプレイし続け、

時には、2,3日の徹夜をしてまで、

ゲームに没頭し続けたという。


そもそも、「緒刀女(おとめ)」は

ボリュームあるゲームであるため、

全シナリオクリアに300時間くらいを

かけなければならない。


本来、超名門高校の生徒であり、

勉強、武道、スポーツに忙しい彼らに

そんな時間はないはず。


だが彼らは勉学を犠牲にしてまでプレイ。


その他、各地で開催されるイベントにも、

授業をサボって参加していたのである。


特に彼らは

この作品に登場する

清楚系御刀女「カゲミツ」を

徹底的に「推しキャラ」として崇拝。


ほとんど盲目の恋と言ってよいほど

愛するようになっていたのである。


大量の

「緒刀女(おとめ)」グッズ、

フィギア、アダルト同人誌の

購入を望むようになったAとB。


だが、金持ち家庭ではない彼らには

そんな資金は無い。


そのため、夏休みには、

グッズの資金を得るために、

学校で禁止されている(名門学校にありがちであるが)アルバイトに精を出しすぎたため、

学校から厳重注意を受けてしまったという。


それでも、

「緒刀女(おとめ)」グッズが欲しいAは

ついに親の財布からお金を盗んでしまった。


果ては家の家具を勝手に売り払い、

「緒刀女(おとめ)」グッズ購入に充てたという。


結局、父親にバレて、

大喧嘩の末、頬が腫れるほどに殴られたとのことだった。


そのくらいの熱をもって、

「緒刀女(おとめ)」に熱中したAとB。


2学期を迎えた頃には、

みるみる成績も落ちていったという。


それでも、

彼らが「緒刀女(おとめ)」の「推し」を

辞めることは無かったという。


そして、

彼ら二人が愛したキャラクター

清楚系緒刀女(おとめ)「カゲミツ」。


彼女の声優をしていた人物こそ、

アイドル声優「木葉さくや」氏であったのだ。


彼らは「緒刀女(おとめ)」の大ファンであると同時に、

「木葉さくや氏」の大ファンでもあり、

彼女の出演するラジオ、

動画チャンネル、

イベント等を

食い入るように観ていたのである。


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