1章
1話
翌朝、昨日あんだけ寝たら快適な睡眠をとることができるわけもなく2時間しか眠れなかった。
学校で寝ることになるかもな......。そんなことを思いながら今日も朝食を作る。
「おはよ~」
「おはよう和希、朝ご飯ならできてるぞ」
「は~い」
そんなこんなで準備を済ませて、いつも通り学校へ向かった。
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俺の通う
教室に入りクラスメイトと簡単な挨拶をして席につく。周りが騒がしい。なにやら諸事情で遅くなってしまっていた編入生が来るらしい。
「なあ大樹、編入生が来るらしいぞ」
と、俺はひとつ前の席の鈴木大樹すずきだいきに声をかける。
「どうでもいい......あと、気安く名前で呼ぶんじゃねぇ」
こんな態度ではあるが話しかければ無視せず返答してくれる。悪い奴じゃないのだ。
「女の子らしいぞ」
「どんな奴だろうと、オレはつるむ気なんざねぇ」
「ホモだもんな」
「何言ってんだテメェ⁉」
いつもどおりの、面白い鈴木だ。少々中二病気味なのもこいつのいいところ。
数名の視線を感じる。何か、腐った視線を。......気のせいだと思うことにした。
そんなこんなで担任が教室に入ってきた。
「よーっす。出席確認......の、前に、先週伝えたように編入生がうちのクラスに来たぞー!いえーい!」
担任は常にテンションが高い。
「編入生の鷹山さんだー!」
鷹山......?教室に入ってきたのは、昨晩、山で出会った女__鷹山翔子だった。
そういや引っ越してきたって言ってたな......。
美少女の登場に教室がざわつく。かく言う俺も、
「大樹、編入生の鷹山さんは可愛いぞ」
鈴木に話しかけた。
「さっきも言ったがどうでもいい......。あと、名前で呼ぶんじゃねぇ」
「もう少し肉がついてるほうが好みか」
目がいい俺が見たところ鷹山のウエストは65くらいだろう。細い。
「は?」
鈴木が俺のことを汚物を見るかのような目で見る。引かれた。
鈴木の前でふざけるのは大概にしよう。
"閑話休題"
鷹山は俺に気づいた様子はない。
と思っていたら鷹山がこちらを見て僅かに目を見開いた。気づいたようだ。
手をあげて軽く挨拶をする。
鷹山のほうも軽く会釈をしようとしたように見えたが、
「静かにしろー」
担任の言葉に遮られたようだ。間が悪い。
「んじゃあ、自己紹介を」
担任が鷹山に促した。
「鷹山翔子、です。よろしくお願い、します」
鷹山が自己紹介をした。昨晩のように漢字の解説はせず、ホワイトボードに自分の名前を書く。
誰かが拍手をしたので俺もそれにつられて拍手をする。
「鷹山の席は真ん中の列の一番後ろだ」
担任の言葉を理解するのに少し時間が掛かった。真ん中の列の一番後ろ......?
俺の後ろだ。マジでか。
「よ、よろしく」
机を担いで俺の近くまでやってきた。ん?......担いで?
鷹山は、机と椅子を顔色一つ変えずに、俺の近くまで、来た。
「......」
鈴木も呆けている。無理もない、自分より体格が小さい、しかも女の子が、机を担いで移動している。その光景を見て驚かない者のほうが少ないだろう。
「あ、ああ。よろしく......」
こいつ、ちゃんと学校生活送れるかな......。
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