プロローグ2
「貴様は何者だ......!?」
つい、見惚れてしまった。女が話しかけてきたと認識するのに少し時間がかかってしまい、
「通りすがりの......って、やらねーよ」
乗りそうになってしまった。
俺の不自然な行動に女は不思議そうな顔をした。どうやら素で言ったらしい。なんというか、凄いな。
「
人に名前を尋ねるときは~、なんて説教を初対面の人にする勇気が俺にあるわけもなく、名乗ることにした。
「......
......この名乗り合いには何の意味があったのだろうか?いや、名乗り合いには意味なんて必要ないのか。
「君は何を、していた......?」
女性__鷹山が問うてきた。それは俺も聞きたい。が、ここは大人の対応ができる俺。
「昼寝をしていました」
俺がそう答えると、鷹山は「そう」と興味なさそうに言った。自分が聞いといてその反応はなんだとも思ったが、そんなことより今は俺も質問をしたかった。
「あんたこそこんな時間に何してんすか」
「知らない。なんとなく、ここに来た、だけ」
自分のことだろうとも言いたくなる返答だったが、俺もたまにそういうときがあるので何も言えず、しばらくの間沈黙の時間が流れた。
「敬語」
「え......?」
「敬語じゃなくていい、よ。歳、そんなに変わらないと思う、から」
「そっか。なら、遠慮なく」
俺は相手がそう言ったのなら遠慮するのはどうかと思う人間だ。
ふと、鷹山が空を見上げているのに気付く。俺もつられてそちらに目を向ける。
「うおぉ......」
星が、綺麗だった。山と言っても小さいものなので、たくさんの星が、近くに見えるというわけではないのだが、普段は見ないからなのかとても美しく見えた。
「綺麗、だな」
そんなことを無意識のうちに口にしてしまうくらいに、俺は目にした光景に心を吞まれていた。
俺の言葉を聞いて、鷹山が少し笑った気がした。俺は空を見上げているため鷹山の表情が見えているわけではないが、なんとなくそんな気がした。
「ここにはよく来るのか?」
「ううん、小さい頃はよく来てたんだけど、しばらく県外に住んでて、ね。だから10年ぶりくらい、かな」
「んじゃあ、こっちに戻ってきたってことか?」
「そうなるの、かな」
この巴形市に限らずともこのようなことは多いのではないだろう。似たような話はよく聞く。鷹山もそんな者たちのうちの一人なのだろう。
その後しばらくの間の沈黙が訪れた。
「帰るのか?」
鷹山が立ち上がった。
「う、ん」
「そっか、んじゃあ......またな」
「!うん、!」
きっとそう遠くないうちに会えるだろう。そんな気がしたんだ。
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