第13話 流れ矢

 この国は主に2つの地域に分けられる。


 まず王都の北方、なので北部と呼ばれる地域。

さらに北部はカキ、イグレックの二地方に分けることができる。


 北部は温暖な気候で農業や林業に適している。

ただ、山地も多く行軍には少し注意が必要なところだ。


 次に王都の南方、南部だ。

ここもサギャ、タージル、ホーライの三地域に分けることができる。


 このうち、サギャとタージルは海に面しており、漁業や海運が盛んだ。

その一方、ホーライは国土の外れにある貧しい地域で

そこの人々は国に見捨てられた、と思っており近年王家に従っていない。

 いや、むしろ南隣のガルソン朝に接近しているといった方が正しいのだという。


 また、北部にしろ南部にしろ王都から離れるほど

豪族が独立的に動いているらしい。

 まったく困ったものだ。



 「陛下!大変です!」


 慌てて駆け込んできたのはオルガ大臣。

一体何事であろうか。


 「ムリ―ナ将軍、流れ矢に当たって重症の模様です!

リマ団長が代役将軍になりましたが国軍は統率を乱しており、危機的な状況!」


 これには宮殿の大広間にいる官僚たちも動揺する。


 「もし国軍が負けたら、王都が攻め込まれる!」


 「そうなったら、手に負えないぞ!!」


 皆の者、落ち着け。そう言うべきの俺が一番動揺していた。


 「どういたしましょう、陛下。」


 大臣ももはや俺に判断をゆだねるしかないようだ。

って俺に聞かれるのが一番困るのだが・・・。


 「だれか代わりに統率できる者はいないのか。」


 ここで皆がうつむくのは覚悟していた。

しかし、反応は想定外のもので・・・。


 (俺を見てる!俺を名指しするように皆が見つめてる・・・!)


 多くの者が目で訴えている。

陛下しかいないと。


 (俺は戦ったことなんか一度もないぞ。その俺にやれというのか!?)


 こう思う俺だが、もしこの戦いで敗れたら王都に攻め込まれて命を失いかねない。

だったら俺が戦場に向かってそれで味方の士気が少しでも上がるのなら・・・。


 「わかった、戦場に行ってくる。急ぎ支度を!」


 俺は王都を大臣に託して出立する。

案内人によると戦場まで馬車で2時間程だという。


 (なんとか俺が行くまで耐えてくれ・・・!)


 こう祈る俺。

俺がいても大差ない、そう言っていた自分は既にいなかったのだ。

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