第12話 逃亡者

 「最近、難民らしき者が増えた気がするが・・・。」


 王都の住人、アバラスの疑問に行商人のゴマスが一言。


 「なにせ北部で反乱が起きたそうでな・・・。」


 「またか・・・。」


 アバラスは落胆の色を隠せなかった。


 

 「話があるからよく聞いてほしい。」


 その日の夜、俺は宮殿内の主だった者を集めてこう訊ねる。


 「この中に此度の反乱を企てた者がいる。心当たりのある者は申し出よ。」


 これに場内は静まり返ったが、視線があちこちに行き来しているのが

俺にもわかる。

 心当たりのある者がいるのであろう。


 (それでも申し出ないのだから、よっぽど黒幕に気を遣っているのだな。)


 そして俺はチラッとヨナファルドを見る。

顔は至って平静だったが、明らかに数人の視線を受けている。

これはヨナファルドで間違いなさそうだ。


 そして翌朝。


 「大変です、陛下!」


 早朝から慌ただしくやってきたのはオルガ大臣だ。


 「どうしたというのだ。」


 「ヨナファルド国王補佐殿が姿を消しました!」


 慌てる大臣に反して、俺はニヤリと笑う。


 「思った通りだ。」


 「え・・・。」


 俺の反応を見て大臣も察したらしい。

逃亡は計画通りであると。



 会議場に向かうと既に多くの官僚が集まっていた。

しかし、これで全員と聞いて俺は少し驚く。


 (明らかに人数が少ないな。)


 そう、ヨナファルドを追いかけて一緒に逃亡した者が大勢いるのだ。


 「将軍。」


 「ははっ!」


 玉座に座った俺は早速、ムリ―ナ将軍に命じる。


 「これで黒幕がはっきりした。もはや後顧の憂いはない。

将軍には北部へ進軍してもらいたいが如何。」


 「仰せの通りに。」


 さぁ、いよいよ邪魔な二人の王子をやっつける時が来た。

本当は戦なんかしたくない。

 でも、あいつらとは戦わずにはいられない、それが運命なのだ。


 「皆の者、出撃ぃ!!」


 将軍の命令で騎士団長、リマ団長含む軍勢1万が王都を出立した。

偵察からの報告によると敵勢は5千。

 しかしヨナファルドの加入で増えている可能性もある。


 決して油断できない戦いなのだ・・・。

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