第10話 黒幕

 人間とは分からない、実に分からないものだ。

これまで最悪な仲だったネイルとビブンの両王子が結託してしまうなんて・・・。


 「陛下、早くご命令を!」


 この力強い声で俺は我に返る。

その声の主は国軍の騎士団長、エンザロス・リマだ。


 「え、でも指揮権はムリーナ将軍に任せたはず・・・。」


 「ムリーナ将軍は慎重すぎる!ここは北部へ打って出るべきなのです!

どうか、陛下直々に北部出兵のご命令を!!」


 待て待て、頭が混乱している。整理しよう。


 この日の朝、王都に飛び込んできたのは二人の王子が結託して

挙兵したというものだ。


 しかし俺に軍を指揮せよと言われてもできないので、ムリーナ将軍に一任した。

だから俺が口を出すべきではないのだが、確かに逆賊は相手の方である。

我らが北部に侵攻するのが筋と言えば筋。

 それなのにムリーナ将軍は王都から軍を動かそうとせず、

臆病と言われても仕方ない。


 「・・・しかし、ムリーナ将軍には考えがあるのでは?」


 俺の言葉にリマ団長はこう反論する。


 「恐れながら申し上げますと、将軍は考えすぎなのです!」


 リマ団長の圧に俺は押されそうになったが、

こう説得しひとまず幕引きを図った。


 「将軍に話をしてみる。だから、少し待ってほしい。」


 これにはリマ団長も反論できず、俺が話を聞くまでおとなしくなった。


 早速、俺はムリーナ将軍のところへと向かう。

確かあの展望塔にいたはず・・・。


 「将軍、少しいいか。」


 「こ、これは陛下。」


 俺は将軍に促されて台に腰を掛ける。

そして休む間もなく本題に入った。


 「一つ聞きたい。なぜ北部に兵を動かさないのだ?」


 これに将軍は言いにくいことがあるかのように下を向く。


 「なぜだ?騎士団長からも積極策が上がっている。

そうするべきではないのか。」


 これに将軍はやっと重い口を開く。

そして開口一番衝撃的な発言をした。


 「この王都のどこかに黒幕がいると考えます。」


 「え・・・。」


 この反乱の黒幕が王都にいるだと・・・!?

ということはその黒幕を見つけ出して後顧の憂いを断ち切ってから

出兵する考えか。


 俺は王都から動かない理由を理解した。

しかし、その黒幕とは一体全体誰なのであろうか。

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