第7話 側近
「ここならいいでしょう。」
こう言ってオーセ神官は周りをキョロキョロと見渡す。
この宮殿の屋上にいるのは俺と神官に加えて護衛の者2人だけだ。
「陛下、ヨナファルドという者をご存じでしょうか。」
「ああ、知っている。側近としてよく動いてくれているよ。」
「そうですか。」
俺の返答を聞いた時、神官は少し下を向く。
「ヨナファルドがどうしたというのだ。」
「あいつは油断ならぬ奴でして・・・。」
油断ならぬ奴・・・?ただの好々爺にしか見えなかったが・・・
「あいつは昔から王家で権力を持ち続けております。
ですが、その手腕は無いに等しい。ではヨナファルドが
なぜ権力を維持しているか、陛下にはお察しがつきますか?」
「・・・?」
なぜも何もヨナファルドはよく働いており、手腕はあるようにしか見えない。
「あいつは陛下に取りついていい顔をして甘い汁を吸う佞臣なのです。」
「・・・。」
まぁ、確かに他の者には誇らしげにしていたが、仕事を果たしているのだから
当たり前のようにしか聞こえない。
「陛下はあの者が仕事を果たしているとお考えで?」
「ああ。」
「その答えはあいつの動きを観察していれば分かります。」
「陛下には騙されないように、気を付けてほしいものです。」
そう言って神官は去っていった。
(神官の言うことは本当なのだろうか?)
自室に戻った俺は衣装だけ暑苦しいものを替えるとヨナファルドの観察に入る。
(だいたいこのあたりをうろついているはず・・・。)
少し待っていると、ヨナファルドが現れて部下に指示をしている。
(何を指示しているのだろう?)
俺は耳を澄ます。
「いいか、陛下の明日の予定をこれに書き写せ。」
「・・・。」
ヨナファルドがこれから明日の予定が書かれた紙でも
見せるのだとばかり思っていた。
しかし、実際は・・・
「夜までに調べて書いておくように。そうだ、いつものお菓子も10個。
用意しておくようにな。」
「・・・!」
なんだこれは、丸投げではないか。
しかもお菓子を10個といっていたが、俺の所にはいつも5個しかきていない。
(なるほど、部下に仕事を丸投げしておいて
自分はお菓子だけ食べて周りをうろうろしていればいいということか・・・!)
そう、結局ヨナファルドは働いているふりをしているだけだったのだ。
俺の心から怒りが溢れ出てくる。
翌日、俺はヨナファルドを呼び出すことになるのであった。
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