第6話 祝辞

 国王としての仕事は俺の適応能力を遥かに上回っている。


 まず、王位継承の祝辞を述べに各地域から有力者がやってくる。

それにしても話が長い。

 一人の祝辞が長いうえ、王位継承2日目の今日は

同じような祝辞を百近く聞いたような気がする。


 だが、オルガ大臣からは国にとって大切な人たちだから

粗末な対応はしないでほしい、というように念を押されているため

一つ一つ丁寧に対応しなければならないのだ。


 「つ、疲れた~。」


 予定の挨拶を終え、つっかえ棒が外れたようにイスへと倒れ込む。


 「お疲れ様です、陛下。」


 そんな俺に声をかけてくれたのは、側近としてよく補佐をしてくれる

ヨナファルド国王補佐だ。


 見た目からしてそこそこ年齢のいったおじいさんだが、

俺のために尽くしてくれる大切な人である。


 ただ、少し気がかりなのは何かヨナファルドさんを皆が避けている

ような気がするんだよな。


 「陛下、疲れているところではありますが会議の時間が迫っています。」


 「ああ、そうか・・・。」


 ヨナファルドに促されて俺は議会場へとゆっくり歩き出す。

会議といっても来たばかりの俺には理解しがたい内容ばかり。

 だから基本的に官僚らとオルガ大臣が進行してくれるのだが・・・。


 (いるだけなはずなのにこんなに疲れるのはなぜだろう・・・。)


 閉会後、神経の疲労を感じつつ廊下を歩いていると、

横からオーセ神官が待っていたかのように現れる。


 「陛下にお話したいことが・・・。」


 「陛下はお疲れなので、また今度にしてもらえますか。」


 パール宮女長が俺の疲労度を察してこう言ってくれたが、

オーセ神官の目が明らかに訴えている。

話さなければならないと訴えているのだ。


 「オーセ殿、何度も言いますが・・・。」


 「いや、話を聞こう。」


 「陛下・・・!」


 俺は確かに疲れている。

でも特別何をしたというわけではない。

 不本意ながら国王になった以上はこれくらい聞いてやらねばと思う。


 だが、この後俺はヨナファルドという者の裏側を聞いてしまうのである。

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