第4話 宮殿
陽が徐々に傾いてきている。
そのころ、俺は宮殿に向けて案内されていた。
「どうですか、馬車の乗り心地は。」
そう俺に声をかけてきたのは、すぐ横に座るオルガさん。
大柄だが優しさがにじみ出るような表情をしている。
先程の神官―オーセ神官曰く、大臣なのだという。
どう見てもどこかのオジサンにしか見えないのだが・・・。
「乗り心地はいまいちですか?」
こう聞かれて我に返った俺は良い乗り心地です、と答えたい所だが
あまりそうは感じない。
恐らく自動車に慣れているせいだろう。
「え、ああ、とても楽です。」
「それは良かった。」
実際は振動が激しくて楽ではないが、そういうことにしておこう。
「間もなく宮殿に着きます。」
大臣に諭されて俺は前を向く。
見えてきた宮殿は遠目から見ると立派だ。
しかし、近づくにつれて修理が行き届いていないことがはっきりと分かる。
(もしかして、この国は経済的に不安定なのかな・・・?)
こう不安がる俺だが、宮殿の中で説明された状況は
想像以上にひどいものだった。
オルガ大臣が言う。
「この国は長年に渡り内紛が絶えず、
先帝も国を治められなかったことを悔みながらこの世を去りました。
絶えず起こる戦乱で国土は荒れ果て、財務の面でも苦しい状況。
さらに近ごろでは地方の豪族らが朝廷の命令を無視して
独自の勢力を築くありさま。」
初めは淡々と述べていた大臣も泣きそうになり、次第に顔をしかめる。
だが、俺は大臣の説明をよそにある疑問を抱いていた。
(神託とはいえ、なぜ俺に白羽の矢が立ったのだろう?
そもそも神様に委ねずとも先帝とやらの子孫がいるのでは・・・?)
もし王家に跡継ぎがいたのなら、その人が王になるべきである。
なのにどうしてどこから来たかも分からない俺が王になったのか。
その謎に対する答えは先帝の遺言にあったのである。
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