第13話 サバイバルにつぐサバイバル

刀を渡された意味がやっとわかった。

ボートを降りた俺たちはとにかくうっそうとした獣道を刀で切り開きながら進むしかなかった。

『他の道はなかったのかよ』

すると前を行く阿修羅がけらけら笑いながらこっちを振り返りつつ

『他のルートはやつらが張ってるから無理w』と言った。

誰も通ったことのなさそうな獣道のようなところをしばらくあるくと目の前がひらけた。

どこまでも続く草原のようなところへ出た俺たちは少し歩いたところで休憩にはいった。

阿修羅は、持ってきたパンとチーズを出して器用にナイフで切り分けてくれた。

杏菜は水筒に入れていた今朝作ったばかりのスープを温めるため手際よく火をおこして、鍋の中に水筒の中身をすべて注いだ。

やがて焚火のぱきぱきと燃える音と一緒に鍋の中身がぐつぐつとおいしそうな音をたてて食欲をそそる香がしてきた。

杏菜はそのスープをこれまた手際よく取り分けて配った。

スープを飲みながらチーズの乗ったパンをかじりつついろんなことを考えた。

おれは・・・涼子を幸せにしたかった。

だけどそれは叶えられなくなった・・・・。

じゃあこれからどうする?

こんな状態で何かをしたくてもとてもじゃないが無理だ・・・。

だけど俺の中でやっぱり自由にしていたいとそんな気持ちがふつふつと湧き上がってきた。

森の夜は空気が湿っていて全身をなめるようになでてくる。

独特の木のかおりにつつまれて寝袋に包まれて明日のために泥のように眠った・・・。


強烈な光で俺たちはすぐに目が覚めた。

だれかが懐中電灯を照らしながらこちらへ向かってくる。

静かにくすぶっている焚火の跡に土を被せ身なりと荷物をまとめやってくる光に気が付かれないようその場をゆっくりと去る・・・。


なんか逃げるのがうまくなりつつあるな・・・。


もう少しすると彼らのテリトリーに入るのだろうか?

動きが早くなっていく

いよいよとなった時に背後から近づいてきた懐中電灯の群れが気が付いたら俺らを包囲していた。

しまった!

そう思った瞬間後ろからにぶいごすっという音とともにおれは気絶させられた。


気が付くとまた知らない部屋に一人椅子にくくりつけられて座らされていた。

鏡張りのその部屋は無限に続くとおもわれる錯覚を呼び覚ますのだろうか

居心地が悪かった。

時々どこかで設置されているスピーカーがががっががっとなっていてさらに不気味さを誘う。

ここはどこだろう?

森の中ではない・・・・見たところどこかの建物であるには違いないのだが、少なくとも味方?ではない。味方だった場合こんな風に縛りつけられることはないからだ。

だとしたら逃げてきたところからまた戻ってきてしまったのか?

不安が残る

みんなはどこへいったんだろう?

杏菜や阿修羅・・・省吾はどこへいったんだ?

つか・・・これって省吾が裏切ったんだろうか?

嫌な予感が次から次へとでてきて止まらない・・・・。

俺は・・・どうなるんだろう・・・。

そうこうしているうちにスピーカーからいきなり音楽が鳴り響いた。

『諸君!おはようございます!!今日も元気かな?』

鼻につくものいいをする声の主は高らかに笑うと

『今後はここで君たちは再教育されていくことだろう!!安心したまえ!費用は無料だ!』そういうといきなりラジオ体操の音楽にきりかわった。

『さあ!今日も元気に体操をしてみよう!』

脚と手が動けない俺はそのアナウンスをずっと聞くことしかできずそのままの状態でどうしたらいいかわからず途方にくれながらも他の人達の心配をしていた。


手足がひどく痺れる・・・・。

たぶんずっと拘束されていたからだろう…。

じんじんと痺れる手足を動かしながらやっと解放された手足をさする。

どれぐらいたっただろうか?

暗い部屋の中で手足の痺れだけが自分がここにいることを感じさせてくれたような気がしてならなかった。

少しすると部屋が明るくなり扉が開いた。

扉の向こうから食事をのせたトレーを片手に一人女性が入ってきた。

『お食事の時間です』

そういうとそっけなく彼女は出ていった。

お腹がすいていた俺はトレーにのせてあるパンとスープを口にし胃の中に流しこむと

薄い毛布を体にまいて寝た。

かたい床の上で毛布だけくるまって寝るのはさすがに疲れは取れないがそんな毎日もだんだん慣れてきた。

みんなは大丈夫なんだろうか?

自分が今このような境遇にあって他の人も同じだとは言えない…。そう思いながら朝のラジオ体操、日に3回の食事を義務的にとっていた。

そうこうしているうちに扉からいつもの食事をもってくる女性ともう一人男性が入ってくるようになった。

男性は身の回りの世話をしてくれるようでのびたひげをそってくれたり着替えをもってきてくれて脱いだ服を洗濯のためもっていってくれたり髪の毛を切ってくれたりとかいがいしく世話をしてくれた。

そうこうしているうちに俺は…

また眠らされているんだろうかと思うほどひどい錯覚に襲われた。

たぶん眠らされているんだろう‥‥。

どっちが夢の中かわからないけど…。


『お食事の時間です。』


トレーをいつものようにおくとシガーといれかわった。

シガーは身の回りの世話をする係だ。

以前、阿修羅様のそばで侍従として働いていた男だった。

阿修羅さまはあれから姿をみていない。

シガーに聞いても知らぬ存ぜぬの状態

しかたなくシガーの言う通りに今はこの男の食事の世話を焼いている。

一時は酷く思い悩んだ時期もあったが今ではもうどうでもいいとさえ思っていた。

結局はお嬢様を救えなかった。

何一つ守れなかった。

自分がここにいてこの男の世話をしているのはもしかして罪滅ぼしのつもりなのかもしれない…。そう思うと少し気が楽になった気がしていた。

どことなく阿修羅お嬢様ににているこの男

数日前に弥勒より世話をするよう言い使った。

『弥勒さま!それよりも阿修羅さまはどちらに…。』

弥勒はただにらみをきかせながらもその問には答えてくれなかった。

ただ任せるとしか…。

気にはなるが致し方なく言われるままトレーをはこぶ…。

それがつながっていくことになろうとはこの時の私は気が付くことができなかった。

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