第11話 変革

山の中を歩いてあちこちさまよった。

雨をしのげる小屋にいくつか泊り

食事をして眠り

次の日に荷物をまとめて次の場所へ移動する・・・。そんなことを繰り返して1か月がすぎた。

追手が来る様子もない

以前に聞いた未来のこと…

人の決定権がAI(人口知能)によってきめられてしまっていること

どういっていいのかわからない

一つわかることといえば

こういう未来は変えないとこの先の人類に未来はないということ。

俺は火をおこしながら揺らめく炎の明かりをじっとみて

『なんか変えられないのかな…AIに頼らない人類の道ってないのかな』

いつの間にかそう呟いていた。

杏菜は俺をじっとみながら

『変えたいよ・・・けど結果まだかわってないのは何かよくないことが起きてそれに人は対応できなかったから今があるんだと思う』

そう悔しそうにつぶやいた。

『いったいぜんたいなにがあったというんだい?おれにはこの世界のことはさっぱりだよ』

そういう俺の次の言葉を手で制して省吾は話を始めた。

『こんなことぼくから言っても信用してくれないかもしれないけど‥‥弥勒父さんから聞いた話ではAIに決定権を与えてやらないと人口の減少は止められなかったって言ってた。』


省吾曰く

人類は昔少子化と称していろんな政策をおこなっていた時があったらしい。

結婚をすると結婚のお祝い金がでる。

子どもが生まれると子供手当を支給する。

出産の費用を国が出していたこともあった。

そして年配の女性たちが若い子育て世代の女性たちに

『子供はたくさん産んでおいたほうがいいわよ』

と会うたびにプレッシャーをかける。

そういったことをやっていたけど

結果人口増加には結びつかなかった。

そこでとある政治家が

『じゃあ結婚を強制にしたらどうだろう?』

そう言いだすのに時間はかからなかったという。

そのうち

『1家庭に1夫婦だから身体のあわない夫婦は子供を作れる相性のいいひとと子供を最低でも3人設けるようにしたらどうだろう?』

という話になりだんだん今の世界になっていったという。

『相性がよくても犯罪遺伝子のある子どもを作っては結果人口減少につながってしまいます。それならば遺伝子を掛け合わせても大丈夫な子作りの制度を設けましょう。』

『いい悪いはだれが判断する?』

『人では間違いがある・・・AIでいいのいでは?』

『それが平等でしょう・』

平等の意味をはき違えた政治家たちのせいでどんどん人は考えることをやめていってしまったのである。

その結果が今の世界…。


『変えるしかないんじゃないかな…。』

俺はいつのまにか無意識につぶやいてしまった。

できもしないのに口に出していってしまったのだ。

杏菜は目をきらきらと輝かせると

『大丈夫私がなんとかするし』

『変われるようになんとかするのか私たちの役目だし』

そう言い放つと

『ご飯の準備するね!』

そう言って準備を始めた。

俺はいつものように水を汲みに外へ出て川の近くまで歩いていくと何かの気配を感じた。

野兎だ

息を殺しながら持ってきた護身用の銃のセーフティーバーをさげて引き金をひいた。

ばーんという音と共に野兎は打たれ転がった。

もっていったら食料になるだろう

そう思って水を汲み

野兎をもって帰ると杏菜が真っ青な顔をして出てきた。

『銃声がしたけどもしかして使った?』

俺は野兎を見せると

『使った!ごめん』と言った。

杏菜ははぁーとため息をつくと

『貸して毛をむしってさばいておく』といいながら野兎をもっていった。

おそらくその野兎は今晩のスープになるだろう…。


次の日

朝ご飯を簡単にすませて

荷作りをしすぐに夜明けとともに出発した。

もうすぐで山の頂上だ

『もうすぐで次の場所につきます。そこで私たちは受け入れられるかどうか査問会にかけられます。』

またか・・・

査問会好きだな・・・未来の人って

そう考えながら歩いていくと信じられない人が立っていた。

『え?どういうこと?』

女性はこちらに気が付くと

『初めまして!私の名前は矢野 陽子といいます。』そう言った。

おれはまた悪夢をみているんだろうか・・・。

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