第2話 繰り返される悪夢

 病室で白くほっそりした涼子りょうこの体を消毒液に浸した手ぬぐいで体をふいていく。

 涼子りょうこは白い着物を着せられきれいに化粧をされ横たわった。

 そのままご遺体の搬送は業者がしてくれるらしく私たちは涼子りょうこの遺体と一緒に斎場さいじょうへ…。

 斎場さいじょうにつくとさっそく涼子りょうこの遺体は斎場さいじょうの真ん中におかれ旅支度をするかのごとくいろんなものが横に置かれた。

 以前と同じようにスタッフの人に言われる。


『本来は親族しんぞくの方のみで行いますが今回はご婚約を結ばれていたにも関わらず最後までご結婚を果たされることができなかったということで勝谷家の方にもお手伝いしていただきます。』

 そういうと斎場のスタッフに言われるままあの世へ旅立つ涼子りょうこのために手甲てっこう足袋たび脚絆きゃはん頭陀袋すだぶくろの準備をさせてもらえる…。


 涼子りょうこの足は以前よりさらに細く脚絆きゃはんを巻いても余ってしまうぐらいなのが悲しくて・・・。今回も何度も巻きなおしてあげた。

 以前とは違うのは今回はもっと若くして亡くなってしまったということ…。


 享年14歳…。


 嗚咽おえつを殺して泣きまくった…。

 また俺は涼子りょうこを幸せにできなかった…。

 完全に俺が間違ってしまったのか…それとも…。

 自分は今度も涼子りょうこを幸せにできなった…。


 母は以前と同じように『私たちは別室で喪服の準備をしてくるわね』といってその場を離れた。


 涼子りょうこの遺体はとある部屋に安置され布団をかけられ、顔にも白い頭巾ずきんのようなものを被せられ、線香をたくための台を前に設置された。


 夜中に線香の火が絶えてはいけないとのことで渦巻状の線香を準備された。


 こうすると長時間もつらしい・・・。


 前回と同じ見た目蚊取り線香みたいだが仕方ないのだろうな・・・。


 一旦自宅に戻って着替えを用意しないとと思いつつタクシーを捕まえようとしていた。

 実はスパーリングをしたそのままの姿できていたためジャージ姿で汗もいっぱいかいているのである。

 その時、矢野が目の前に現れた。

『なんでなの?なんで私じゃだめなわけ?』

 何言ってるんだこいつ?って思いながらも無視してタクシーを捕まえようとした。


『お願いよ!私を見てよ!私はあなたに助けられて本当に感謝してたし、涼子りょうこよりもあなたを愛する自信があるのよ!なんで私じゃだめなの!』


『俺は君を助けていないし知らない!もうかまわないでくれ!』


『いいえ助けてくれた!暴力をふるう熊のような父から私を守ってくれたじゃない!あの時から私はあなたを愛している!お願い竜馬!私を見て!涼子りょうこではあなたを幸せにはできない!だから…。』


『お前は涼子りょうこいいかげんにしてくれ!』


 あれ?なんかデジャヴ?

 そう思った瞬間俺は矢野に体当たりされ

 よろけた俺は…道路を飛び出す形で対向車線にきた車のライトに照らされ…






 死んだ?

 いや死んでない…。




 気がついたらまた実家の自分の部屋で寝ていた。


 またなのか…そう思いながらベットから降りようとしてまたも違和感を覚えた…。


 なんでベットの高さがこんなに高いんだ?

 目の前の姿鏡すがたかがみをみて、また自分が小学生に戻っていることに気が付いた。


竜馬りょうま~~~~起きなさいよ~遅刻するわよ!ほら!涼子りょうこちゃん迎えにくるわよ!』


 俺…また戻ってる?

 とにかく着替えて下に降りて行く


 親父がコーヒーをすすりながら新聞を広げて読んでいる。

 日常の朝だ…。

 目玉焼きとベーコンがあってトースターからいい色に焼けたトーストがおいしそうだ。

 カップに牛乳を注ぎ目玉焼きとベーコンを食べトーストにバターを塗って食べた。

 常に牛乳をこくこくと飲んで口の中いっぱいにトーストと牛乳を溢れさせるぐらい入れてあるほうがとても幸せに感じでいた。

 またこの光景を繰り返すことになるとは…。思いもしなかった。


 そうこうしているうちに涼子りょうこが迎えにやってきた。

『竜ちゃんいこ!』

『おう!行こうぜ!』

『いってらっしゃーい』


 なぜか死んだと思っていた涼子りょうこが生きてまた目の前にいる。

 3度目だ…。

『竜くん?どうしたの?』


『俺…お前を絶対に守ってやる…。どんなやつからも!』

 涼子りょうこはにっこり笑うと

『うん!いつまでも一緒だね!』と微笑み返してくれた。


 学校につくと教科書を机に入れているときに図書室で借りていた本が一緒に入っていることに気がつくが…。

 ここまで一緒か…。

 今回はやめておこう…。

 絶対にろくなことにならない…。

 それは確信がもてていた。

 もう2度と間違えたくない…。


 しかしその後あきらかにざわつきがあって…。

 でかい図体の熊のような男がわめきまくりながら何度も小学生の女の子の顔を殴りまくっていたという話を聞いた。


 小学生の女の子は意識不明いしきふめい重体じゅうたいになり病院へ搬送はんそうされたとのことだった。


 俺じゃなくてもだれかが助けてくれる…。

 そう考えていたんだ…。


 その後、矢野だと思われるその女の子は亡くなったと聞いた。

 え?

 なんで?

 俺たちが助けないと死ぬの?


 どういうことなんだろうか…。

 しかし涼子りょうこは生きている!

 大丈夫問題ない!

 そう思っていたんだ…。

 その時は


 しかしこの時酷い間違いがあったことに俺は気がつくことができず

 さらに悪いことに今後もこのせいで俺はまたも間違えてしまうのだった。


 違和感に気がついたのはその後1週間たってからだった。

 涼子りょうこの傷があきらかに増えていっていた。

 俺は涼子りょうこにだれにやられたんだよ!って詰め寄った。

 涼子りょうこは、にこっと笑うと心配ないと言って言わなかった。

 俺はとにかく涼子りょうこを守るために何が必要かをずっと考えていた。

 まずは1度目は医者を目指したが涼子りょうこは21歳の若さで亡くなってしまった。

 次に2度目は格闘技王かくとうぎおうになって涼子りょうこを助けたいそう思った。

 これも14歳という若さで亡くなってしまった…。


 どちらもお金さえあれば金で解決できることなんじゃないか?

 医者もいい医者を探せばいい

 護衛も自ら格闘技しなくても護衛にたけた人をお金で雇えばいい…。

 そう思うとやはり涼子りょうこを守るためにはやはり金か…。

 そうなってくるとやはりもっといろんなことを勉強しないとダメだな…。

 これからのビジネスは大陸にも目を向けて…

 そうなってくると語学が必要になってくるか…。

 俺はそう思いこむと英語はもちろんのこと中国語(北京語・広東語など)韓国語(ハングル)を勉強し始めた。

 中国語にいたってはアンダー15中国語検定を受けて合格したり

 英検は2級を頑張って取った。

 まぁドイツ語とかは医者の時に学んでいるしとりあず経営と経済関係の本を読みつつ

 世界情勢をしるためにも新聞は欠かせないな…。

 日本経済新聞をとったり

 いろんなことを勉強し吸収する俺を見て触発されたのか親父がおれのためのパソコンを買ってくれた。

 相変わらず涼子りょうことは家を行き来する仲だったし

 なんの問題もないと思って俺は日々を過ごしていた。

 しかし…そもそも俺のこの3度目の人生のやり直しにいたってはいったいなんでこんなことになっているのかよくわかっていなかった。

 しかも2回目までは矢野に体当たりされて車にひかれそうになって‥‥。


 今回は矢野はいない…。

 もしやり直しをするきっかけになっているのが矢野だった場合

 今回が最後ということになる。

 おれは少しぞっとした。

 今度こそは、うまく涼子りょうこを幸せにしないと、次はない…。

 そう思うと急に緊張してきた。


 そんな緊張感の中おれと涼子りょうこは無事小学校を卒業し中学に入った、今回の俺たちは私立の中学に入学し一緒に登下校を繰り返した。


 涼子りょうこは相変わらず優しく誰に対しても気軽に接していて同級生からも下級生からも人気が出た。

 俺はというと騎士ナイトというあだ名をつけられて名前のとおり涼子りょうこの傍を片時も離れようとはしなかった。

 その後も俺は涼子りょうこから離れることはなく涼子りょうこの謎の傷が増えていくことに疑問ももたず大学まで進学を果たしたのだった。


 俺は関西にある国際大学に入学することが決まった。

 そこには経営経済学部というところがあっていろんな経営に関することが学べるというところだった。

 国際大学というだけあって語学も豊富に勉強ができた。

 教員も海外の先生が多く会話の練習にもなってよかったと思った。


 オリエンテーションの時期

 新入生はセミナーをさっそく決めなくてはいけない。

 そう考えるといろいろと準備とか大変だった。

 まずは大学で配られる履修の手引きをもらってそれを見ながら

 履修の計画を練る!


 はぁ…お手上げ…まったくわかんねぇ!

 だいたいなんだこの鬼のようなスケジュール!

 説明会にも出席しなくちゃなんねーし合同セミナーあるし

 履修登録の仕方まじわかんねーし!

 医大の時こんなんだったかな?もっと簡単だったような…。


『みなさん!まずは大学にきたら何をしたらいいか!履修登録りしゅうとうろくですよ!4月2日からもう登録できますからね!履修期間りしゅうきかんは短いのでみなさんはやめに動いてくださいね!なお履修登録りしゅうとうろく変更期間へんこうきかんは9日までです!』


 おお…以外と時間がない…。

 経営経済学部だから経営に関することを履修しとけばOK?とか思っていたら大きな間違いだった…💦

 まず3つの柱となっている


 ・一般教養科目いっぱんきょうようかもく

 ・学科別卒業案件がっかそつぎょうあんけんにかかる選択科目

 ・資格免許しかくめんきょにかんする選択科目


 これに着目して4年間で160以上の単位数を履修をしなくちゃいけなくて…。

 よくできてるよ…。トホホ…。

 医大の時は実習も含まれていたからまだましっていえばましかもしれない…。

 履修登録が済んだら次は新入生歓迎会!

 そして健康診断と忙しい!

 合同セミナーの時間の時に担当教員と話しをする機会があったから念のため


『新しい事業をおこないたいのですが資金繰りとかどうしたらうまくいきますか?』

 と聞いてみたところ


『簿記を勉強しなさい!』


『ほぉ…それだけでわかるようになるのか…。不思議~』

 と思ったら普通に3級簿記というわけではなく2級の商業簿記りょうぎょうぼき工業簿記こうぎょうぼきのことだったり…。未知の世界だ…。


 履修届も無事済んでオリエンテーションも終わりセミナーに関しても説明を受けた後

 俺は涼子りょうこの家に行くことにした。


 相変わらず涼子りょうこの傷は多い、理由を聞いても教えてくれないし小学校の時からだから結構長い…。

『なんか不安なこととかあったら俺に言えよ!絶対に解決してやるし…。』

 涼子りょうこはうんと小さく頷くだけでそれ以上は何も言わない。

『それよりも竜ちゃん大学はどう?面白い?』

涼子りょうこも受験していけばよかったのに…。』

『私はいいんだぁ‥。お母さんとお父さんが心配するから。』

 ドアをノックする音がして涼子りょうこの母さんが入ってきた。

『お茶ここにおくわね~ではごゆっくり~ウフフ♪』

 ウフフって…。💦


『竜ちゃんは将来どんなお仕事につきたいの?』

『おれ?まだ模索中かな…。』

『大学入ったばっかりだもんね…。ゆっくり考えるといいと思うよ』

『あ~もしかして心配されてるのか?』

『ううんそういうわけじゃないよ…。』


 涼子りょうこの両親にしたら医大に行ってた時は俺と涼子りょうこの交際はすごく喜んでいたが今の俺は何をするのかまだ決まっていない上に大学に行っているしかも経営経済学部だ…。不安でしかないのはわかる…。

 これがまだ法学部とか医学部とか専門的な大学だったらよかったんだろうけど…。


 大学といってもいろいろある

 学部学科ごとにいろんな人もいるし

 いろんな先生もいておもしろい

 入ってすぐにお世話になったのは学生課だった。

 ここは学生に関することをすべておこなっているらしく

 奨学金のこととか履修登録にかんすることですげぇお世話になった。

 あとはオリエンテーションの時に紹介されたが就職課というところがあるらしい。

 就職課では2年の後半からみんな行くみたいなことを言っていたが俺はどんな企業が募集をかけていて大きくなっているのかが興味があるから用事がないときでも就職課に入り浸っていた。(4年の就職浪人しゅうしょくろうにんになりそうな先輩からはすげー嫌な顔されたけど)

 あとは資格免許については会社経営するのに必要なものだけ取っていればいいんじゃないかと思いとりあえず図書館に行って資格免許の本を片っ端から借りてみた。

 まぁざっと

 ・MBA(Master of Business Administration)

 ・中小企業診断士

 ・経営士

 ・公認会計士

 ・税理士

 ・日商簿記検定

 ・マーケティング・ビジネス実務検定

 ・ビジネスマネジャー検定


 こんな感じか…あとはパソコンも多少できたほうがいいらしいので

 MOS

 Adobe creative関連

 この辺をおさえておけばOKだろう…。

 先生からFPもとっておけって言われたけどFPってファイナンシャルプランナーの略だよな…。

 簿記もあるし経営士も勉強するから別にいいかなと今のところそう思っていたりする。

 1回目のセミナーが始まるまでにとにかく図書館に入り浸り読破した。

 その後バイトの情報誌を読んでどんなところが自分にとって勉強になるかを考えてアルバイトの面接に向かった。

 授業にあまり影響のうけないのがいいかもしれないな…。

 そうなってくるとやはり夜の仕事が多い…。

 カフェバーが応募ででていたのでそこに行くことにした。

 こういうことは話術も学べるしな…。


 そんなこんなで始まった大学生活…。

 おれはまた見落としていることがあることも気が付かずに、涼子りょうこのためとかいいながら学生生活を送るのだった…。

 そう涼子りょうこを守るため…。

 そこはぶれずにやってきたはずだ!

 今は矢野陽子もいないしまず14歳と21歳で亡くなることはないだろう。

 問題はその後だ

 涼子りょうこを守るためには財力が必要になってくる。

 俺はいろんな経済関連の雑誌を読んだり今どういうことが必要とされているかなど

 いろんな経済誌を読んだ

 そしてやっとセミナーの授業の日

 意気揚々と大学へ向かった。


 プルル…

 携帯がなっている

 こんな朝早くになんだよ…。

 それは園子からの電話だった。


『はい…』

『竜ちゃん…りゅりゅが…また入院した…。』

 !!!!

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