【第2章】第12話 罰ゲーム

💎前回までのあらすじ💎

【恋愛経験もほとんど無いまま見合結婚した大河瑠色おおかわ るいは、20年近く、夫一筋に家庭円満のためだけに生きてきた。しかし、夫の部下である年下の男に片想いし、その罪悪感と、女を終えていく恐怖から、ある日衝動的に "出会い系サイト" に登録する。

そこで出逢った大学准教授の倉松力斗くらまつりきとに抱かれ、初めて女のよろこびを知った瑠色の内側は激しく変わり始め、その変化はやがて、徐々に外側へあふれれ始めた】



      【 本 文 】



(そう言えば、力斗りきとはいつも、ずっと私を撫でていてくれる)

 瑠色るいなかで、時に激しく、時にゆるりと何度も何度も動いた後、のところで動きを止め、汗ばんだからだを彼女から離した力斗は、添い寝するように横たわると、目を閉じて息を整えつつ、さき程からずっと、彼女のからだを撫でている。

 彼はいつも、彼女と少しでも長く愛を交わせるように、自分を解き放つ時機ときを最も後に回していた。 

「力斗、疲れない?疲れたら、休んでね」

「うん?どうしてそんなことを言うの?」

力斗は目を閉じたまま、手を止めずにいた。

「だって、力斗、いつもずっと私の軆を撫でていてくれるのだもの。疲れちゃうでしょう?」

すると力斗は、瑠色を強く抱き寄せて言った。

「いいんです。撫でていたいんです。触りたくなるんですよ。

 3週間もえなかったんだ。貴女あなたのそばで、じっと横になってなんかいられない。

 これが普通なんです。こうして貴女の軆を撫でているのが、私には自然なんです」

力斗は相変わらず朝と晩に必ずメールをくれるし、講義の合間に毎日欠かさず電話もくれ、1時間は話している。

 それでも、力斗と逢えなかったこの3週間は、瑠色には長すぎた。


   🔯🔯🔯🔯🔯🔯🔯🔯🔯🔯🔯


「その日は研究者会議があるからダメです……えっと、その日はハーバードから共同研究者が訪ねて来るんですよ……その日はどうしても抜けられない教授会が……」

3週間前、次の逢瀬おうせの候補日を、力斗にことごとく却下きゃっかされている内に、瑠色はスマホに耳を当てながら、子供のようにしくしくと泣き出した。

「泣かないで下さい。私はどこへも逃げませんよ」

力斗はヘッドホンをして、スカイプで瑠色と話しながら、次の講義のレジメをせわしく準備していた。

「あなたに逢えないことが、こんなに切ないとは思わなかった。私、“切なさ”を人生で初めて体験しているの。こんなに苦しいなんて……。

 あなたに逢うと、私、急速充電されてパワーが120%になる。でも、別れた途端に、自分からすごい勢いでパワーがれ出ていくのが分かるの。

 そして、3日も経つと、電池残量が30%くらいまで減ったスマホみたいになっちゃう。

 その30%で、次にあなたに充電してもらうまで、なんとか持たせなくちゃいけなくなる。

 あなたに逢えないまま、夫と週末を2度も3度もやり過ごす内に、電池はほとんどくなって、10%もない電池で、やっと仕事をして、やっと家事をしているの。

 もう、夫に叱られないようにするだけで精一杯よ。それでも、どうにかこうにか“妻と母親”をやっているけれど、夫に叱られることが、前より増えたわ……」

瑠色はしゃくりあげながら訴えた。

 力斗が最近の瑠色の話を聴いていると、確かに、憲介は以前にも増して、癇癪かんしゃくがひどくなったように思う。

 先日は、夕食後、瑠色が皿洗いを終えると、憲介がケーキを食べたいと言うから、彼女は皿にケーキを乗せ、ケーキの箱の中に入れられていたプラスチックのスプーンを添えて出したそうだ。

 すると憲介は、顔を真っ赤にして激昂げきこうし、皿ごとケーキを床にたたき付けた。

「こんなスプーンで食えるかっ!俺を馬鹿にしてるのか!?」


「毎回プラスチックのスプーンを出している訳ではなくて、その日はお皿を洗い終わったところだったから、それで……。

 そもそも結婚してから17年間、ケーキ屋さんでもらうプラスチックのスプーンを嫌がったことなんて、1度もないのよ。なのに今回はなぜか怒ってしまって、それから1週間は無視されていたの。

 もう、何で怒り出すか判らなくて……」

力斗は、瑠色の辛そうな様子を電話で聞く度に、すぐにでもそばへ行って救い出したくなる衝動に駆られるが、実際には、仕事と家族を放り出して、瑠色の家庭に踏み込むことができない自分を、ふがいなく思っていた。

「ごめんなさい。お仕事中に子供みたいに駄々だだをこねてしまって……力斗、間もなく講義でしょう?もう、お電話切るわね」

「いや、少しくらい遅れても大丈夫ですよ」

力斗は、瑠色の気の済むまで話を聞いてやりたかった。それくらいしか、してやれないのだから。

 力斗は、自分に3週間逢えないくらいのことで、この世の終わりのように悲しみ、幼子おさなごのように泣きじゃくる瑠色を、とても愛おしく感じる自分を意外に思っていた。

 これまで、交際している女性に泣かれたりすると、非常にわずらわしく感じたものだ。

 その点妻の倫子りんこは、そういう面倒なところがなく、そもそも感情や欲求をあまり表に出さない女だから、結婚できたようなものだ。

 しかし、瑠色は正反対だった。

 彼女は、頭に浮かんだことはそのまま口に出すし、表情やしぐさを見れば、すぐに感情が分かった。

「夫にはね、『一呼吸置いてから口に出せよ。お前は馬鹿なんだから』って、よぉく叱られるの」

と、瑠色は、我ながら困ったものだというように肩をすぼめるが、力斗には、そんなところこそ、彼女の愛すべき特質だと思っていた。

「あなたは、そこがいところなんですよ。変に気を遣ったり、遠慮したりしないで下さい。あなたのさがつぶれてしまう」


 瑠色は、憲介に叱責しっせきされたと言っては泣き、力斗に逢えず淋しいと言っては泣いた。

 講義が始まる鐘が鳴り出しても、力斗はいつも、瑠色が泣き止むまで電話を切る気になれなかった。

 学生は放っておけるが、瑠色は放っておけない。

「大丈夫。私はいつも貴女のそばにいますからね。

 本当です。感じませんか、私を?

 私は、貴女がすぐそばにいると、いつも感じています」

瑠色は、少し赤くれたまぶたを閉じた。

 電話の向こうで、こちらを温かく見つめている力斗が見えた気がした。

「うん……力斗がそばにいる」

「そう。講義中も、貴女を想っていますからね。大丈夫ですよ」

「ありがとう」

力斗は、瑠色の声がいくぶん明るくなったので、ほっとした。

「こちらこそ、ありがとうです」

「え、どうして?」

瑠色が不思議そうに聞いた。

「私も、貴女の声を聞けて嬉しいのですから。では、講義に行ってきますね。また今夜、メールします」

そう言って、力斗は電話を切ると、

「さぁて、ダッシュだ!」

と、200人近い学生のレジメを両手に抱え、研究室を飛び出した。


   🔹🔹🔹🔹🔹🔹🔹🔹🔹🔹🔹


 倉松力斗くらまつりきとと出会い系サイトで初めてメールを交わしたのは、梅雨の頃だったから、あれから数ヶ月が経つのかと、力斗にベッドで心地好く撫でられながら、瑠色は思った。

 ほんの数ヶ月前までの自分が、今の自分を見たら、どんなにか驚くだろう。

 もっと以前-加納健かのうたけしに出会う前-の自分だったら、不道徳極まりないと怒り、軽蔑けいべつしたに違いない。

 その加納健も、すでに去った。

(なんて目まぐるしい数ヶ月だったのかしら)

家と事務所を往復するだけの毎日で、姑と憲介の顔色しか見ていなかった20年近い歳月を思うと、この数ヶ月は、別世界にワープしたかのようだ。


 力斗とは、生まれ育った場所は日本列島の西と東に離れており、大学も、彼は都内の私立大、こちらは地方の国立大で交流など全くなく、就職先も、現在住んでいる所も、全てにおいて全く接点がなかった。

 そして、力斗は研究室にこもりっぱなしであるし、瑠色は束縛の強い憲介のもと、家に閉じこもるように生活していたから、本来であれば、出逢いようがない2人だった。

 しかし、インターネットの革命的進化のお陰で、一生互いの存在など知り得なかったはずの2人が、こうして出逢うことになった。

「天文学的確率だと思うなぁ……」

と、力斗は時々話した。

「ある調査によるとね、人が一生の内に出会う人の数は、2万人いるらしいのです。

 その中で、心身がぴったり合う、真のパートナーと呼べる人は、4人いると言います。そして、相手にも、もちろんこの確率は働きます。

 そんな相手に運良く出会えたとしても、一方がまだ子供であったり、同性だったりすると-まあ、同性愛者の場合があるにせよ-確率はさらに低くなる。

 そう考えると、“真のパートナー”と呼ぶべき、ものすごく相性の良い相手に出逢えるチャンスは、天文学的確率になるのですよ。

 だから私は、恋愛や結婚に期待したことがなかった。確率が低すぎますからね。

 でも、心の奥底では、このまま、人を本気で好きになることもなく人生を終えるのかと思うと、あまりに残念と言うか、完全にあきらめてしまうのも淋しいな、と思っていたんです」

瑠色は、ネットが苦手で、恐がりで、非常に規範的だった自分が、よりによって “ 出会い系サイト” で知り合った男に、こうして軆じゅうを撫でられ、恍惚こうこつとしていることが、天文学的確率より起こり得ないことだったと、我が事ながら他人事のような、不思議な感覚になるのだった。


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 力斗は相変わらず、締切に追われていた。

 大学の専任教諭には、秋は、講義だけでなく、事務的な仕事や行事が重なる。

 力斗はそれに加え、第一線の研究者として、実地調査や論文の執筆、辞書の担当部分の執筆、査読等々もやらねばならず、調べるのも読むのも書くのも大量にあった。

 自分であればパニックを起こして、全て投げ出しそうだわと、瑠色の方が目が回ってくる。

 力斗は昨夜も3時間ほど眠っただけで、つい先ほど午前の講義を2つ済ませた後、すぐに、いつものホテルまで逢いに駆け付けてくれた。

 3週間ぶりの逢瀬おうせだ。

「今週末、北京大学で基調講演でしょう?していて、大丈夫?」

と瑠色が聞くと、

「う~ん……をしていては、本当は駄目なんですけれどね……一応、講演の原稿を用意しないといけません。

 でも、誰かさんが、『逢ってくれないと、

“ 脱がない罰ゲーム ” をやるなんて脅すもんですから、応じるしかありませんでした」

力斗は瑠色の軆をでさする手を休めることなく、おどけた口調で答えた。

 瑠色にとって、力斗と逢わないでいるのは2週間が限界だった。2週間を超えると、身も心もすっかりしおれてくるのだ。

 結婚後ずっと、姑や憲介が押し付けてくる価値観の枠の中にめ込まれ、毎日調教されている内に、彼らに生きることにれてしまっていたから - 逆らうより楽だったのだ - もはやその状態を窮屈きゅうくつとも苦しいとも感じることはなく、精神状態は低めで安定していた。

 ところが、4年前、加納健かのうたけしに一目惚れしたことで、長らく眠っていた彼女の魂は、揺さぶり起こされ始めた。

 さらに、憲介が加納を無理矢理引き離したことで、瑠色の魂は、まるで爆弾でも落とされたかのように、目を覚ました。

 1度目を覚ますと、これまでのように檻の中でじっとしていることが、苦痛になってきた。

(私は、息を吹き返したのよ)

しかし、なにせ檻の中に20年近くも居たものだから、その息はまだか細く、憲介に毎朝毎晩こんこんと説教されていると、なんだか憲介の言うことが全て正しくて、自分が今やっていることは、とんでもなく間違っているように思えてきて、檻の外へ出しかけた足のつま先を、すぐに引っ込めてしまいたくなる。

 でも、瑠色は再び眠りに着く気は毛頭なかった。

(目は覚めたのよ。あとは、この檻から少しずつ出て……そう、少しずつで良いから、外を見て回るの)


   ▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️


 瑠色は、 “ 脱がない罰ゲーム” は、我ながら良いアイデアだと思った。

 忙しすぎて逢えない力斗を、ベッドでらしめるには、なかなかに良い方法ではないか?

 力斗は、産業経済学の分野では第一人者であり、海外での学会に招待されることも多く、講義よりも、研究活動で一年中多忙を極めている。

 しかし、瑠色と出逢った夏のあの時は、珍しく仕事がけた直後だった。

 さらには、妻が、東京見物にこちらへやって来ていた兄家族と共に、秋田の実家へ娘を連れて突然帰ったために、スポットのように自由な“間 ”ができたのだ。

 瑠色があの盆休みに、サイトの男達と会ったのは、そもそも、最初に力斗と会う約束をしたのがキッカケだった。

 他の男達からも熱心にメールをもらい、何度も会いたいと頼まれているのに、力斗とだけ会うのは不公平だと考えたからだ。

 つまり、瑠色が自ら、直接会って話がしたいと積極的に誘ったのは、サイト内でピラニアのように群がってきた何十人もの男たちの中で、力斗唯一人ただひとりだった。

 しかも、その最大の理由は、

(色気のないこのメール相手だったら、絶対だろうから、安心だわ)

と踏んだからだ。

(とんだおかど違いだったわ)

瑠色は我ながら可笑おかしくなる。

(あの時は、毎日何度も長いメールを交わしているうちに、書くのが面倒になってきて、いっそ会って直接話した方が楽だなって、ふと思い付いたのだっけ。

 やっぱり、少しは怖かったわ。憲介けんすけさんに内緒で、見知らぬ男性と2人きりで会うなんて、罪悪感も湧いた。

 でも私は、今までと違うことをしてみたかった。今まで発想もしたことのない行動を取ってみたかった。ちょっぴり冒険をしてみたかった。

 あの時躊躇ちゅうちょして、力斗を誘わなかったら、今ごろはどうしていただろうか……)

 あの夏の2日間を捕まえていなかったら、今頃2人は、またとない邂逅かいこうの機会を逃していたことになるが、それよりも恐ろしいのは、そんな稀少きしょうな機会があったことに気付くことさえなく、これまで通りの日常を送っていただろうということだ。

 そう思うと、瑠色はゾッとした。

 あの時、力斗と直接話してみたいと、ふと思い浮かんだことをやったのと、やらなかったのとでは、その後の人生がこんなにも変わってしまう。

 人は、何かをやって失う事よりも、何もやらずに失う事の方が、はるかに多いのではないか。

(つかんで良かった……この出逢いを)

瑠色は、力斗にしがみついた。


    ♣️♣️♣️♣️♣️♣️♣️♣️♣️♣️


 瑠色は、あの夏のように、これから先も割と頻繁に逢えると思っていたから、大学の後期授業が始まり、力斗と月に2度逢うのがやっとになってくると、頭では仕方ないと解っていても、からだがやるせなく、つい意地悪を言いたくなるのだった。

「こんなに逢えないなんて、辛いわ!今度逢ったら、“ 罰ゲーム ” をしてもらうから」

「何ですか、それ?」

数日前、研究室のデスクで、毎日山のように届くメールに次々と目を通し、いくつかに返信しながら、スカイプで瑠色の声を聞いていた力斗は、聞き返した。

 力斗は、毎日研究室から瑠色に電話するのだが、その時間は、メールの処理やルーティンワークなど、単純作業をすることにしていた。

 そうすれば、彼女の話もきちんと聴けるし、好きな人の声を聴きながらすれば、単純作業も苦でなくなった。

 ただ、日本語で聴いたり、話したりしながら、英語でメールを書くのは、多少やりにくかったが。


「今度逢った時、私、ホテルの部屋へ入っても、服を脱がないから。力斗には、“脱がない罰ゲーム”をやることにしたの」

久し振りに逢えたというのに、ホテルへ入っても本当に脱がずに頑張る瑠色に、力斗は閉口へいこうした。

 自分だって瑠色に逢いたいのは山々だ。しかし、仕事が次々と舞い込むのだから、仕方がないではないか。

 それでも、睡眠時間を削り、娘と過ごす時間も削り、彼女との逢瀬おうせの時間を最大限創っている。

 なのに、罰ゲームとは納得がいかない。

 瑠色とは裸で抱き合っているのが一番気持ち好い。こんな理不尽な罰ゲームをしているのは、1分だってもったいなかった。

 しかし力斗は、この罰ゲームをやらされている内に、何やら面白くなってきた。

 と言うのも、愛撫されて感じているのに、いつまでも秋物の厚地の服の上からまさぐられていたのでは、むしろ辛いのは瑠色の方ではないか、と見ていて判ったからだ。

 自分が仕掛けたわなに自ら落ちてもだえ苦しむ瑠色の様子を見ていると、力斗は可笑おかしいような、気の毒なような気持ちになってきた。  

 彼は笑いをみ殺しながら言った。

「瑠色、貴女あなたが我慢してどうするんですか?これじゃあ、私に対する罰ゲームにならないじゃあないですか」

力斗は、瑠色を背後から羽交はがい締めにし、うなじを吸いながら言った。

「……そうだけれどぉ……うんっっ……力斗の方が……辛いんじゃない?」

瑠色は眉根まゆねを寄せ、あえぐように言った。

「それはどうかな?」

力斗は、瑠色のセーターの中に後ろから手を回し入れ、乳房を揉んだ。

「あっ……」

瑠色は腰をくねらせ、両太腿をきゅっとくっ付けた。

「ねぇ……こうしたらどうですか?」

先程まで悶々もんもんとしていたのに、すっかり余裕の声で力斗が提案した。

「貴女が声を洩らすごとに、一枚脱いでもらう、というのは?」

「うん……そうね、いいわ。私、声、出さないもん」

力斗は、猫がとどめを刺す前に獲物をいたぶるような、あやしい気持ちになるのを感じた。

(よおし、可愛い声を上げさせてやろう。なに、慌てることはない。どうせ時間の問題なんだ。ゆっくり責めることにしよう)

力斗は、わざとゆっくりした動作で、瑠色のセーターやスカートの上から、腰や下腹部、胸をゆっくりとんだり、撫でたりした。

 瑠色は、ソファの上で力斗の腕の中に身を任せながら、もじもじ、くねくねと軆をよじり、声をらしそうになると、両手で自分の口を押さえた。

 力斗はその手をつかんで払うと、唇を重ね、少しずつこじ開け、舌をゆっくりと侵入させた。

 瑠色は、スローな責め方に弱かった。

 力斗は、彼女の舌を自分のそれで絡め取りつつ、片方の手をスカートの中へ入れると、パンティの上に中指を当てがい、熱くなっている中央部分を優しくなぞった。

「ぃやっっっ……!」

瑠色が小さく叫んだ。

「はい、声を出しましたね」

力斗は、してやったりといった顔でそう言うと、

「はい、セーターを脱いで」

と、瑠色の白い肌に映える、鮮やかなブルーのセーターを、頭の上まで一気にまくり上げた。

 胸元に白いガーベラの花を型どった、真白いシルクのスリップ姿も愛らしい。一気にスカートも脱がせたくなるが、それでは、せっかく自らわなにかかった獲物を、たのしむ機会を失ってしまう。

 力斗は、薄着になった瑠色の上半身にはえて触れず、膝丈のタイトスカートの上から、太腿や腰を愛撫した。

「……力斗……私……辛くなってきちゃった……」

「だめでしょ、声を出しちゃ」

「でも……」

力斗は唇で彼女の口をふさいだ。

 瑠色は、力斗が、4本の指を揃えてスカートのすそに沿わせるよう太腿を撫でる度に、そこから核心へと伝わってくる微細な振動に、何度も声を洩らした。

 なかなか逢えない恋人をらしめるために始めた罰ゲームのはずが、自分の方こそ我慢する羽目になり、余裕の笑みを浮かべる力斗の前に、ものの10分も経たずに降参し、全裸にされた瑠色だった。

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