【第2章】第13話 セクシーな下着より、素肌。

💎前回までのあらすじ💎

【恋愛経験もほとんど無いまま見合い結婚した大河瑠色おおかわるいは、20年近く、夫一筋に家庭円満のためだけに生きてきた。しかし、夫の部下である年下の男に片想いし、その罪悪感と、女を終えていく恐怖から、ある日衝動的に "出会い系サイト" に登録する。

そこで出逢った大学准教授の倉松力斗くらまつりきとに抱かれ、初めて女のよろこびを知った瑠色の内側は激しく変わり始め、その変化はやがて、徐々に外側へあふれ始めた】



       【 本 文 】



「なんだ、パンティはいてきたんだ…」

瑠色るい力斗りきとからこの台詞せりふを聞くのは、これで3度目だ。


力斗は、ホテルのソファで膝の上に瑠色を横抱きにし、ワンピースのすそから手を入れたと思うと、がっかりした声を出した。


前回、力斗の研究室で逢った時には、瑠色はパンティーを着けていなかった。

「やらしい人妻ですね」

力斗は思わずはしゃいだが、そんな無邪気さが自分に残っていたことを、彼は我ながら意外に思った。


この時瑠色は、ブラジャーは着けていたから、力斗は、

「今度はノーブラ、ノーパンで来て下さい」

と頼んだ。


瑠色は、日頃非常に論理的で冷静な力斗のことだから、冗談だとばかり思っていたのだが、どうやらそうでもないらしいと、微笑ほほえましく感じた。


「あ、でもブラジャーは着けてないんだ!」

ワンピースの上から胸をまさぐった力斗が、打って変わって嬉しそうな声を上げる。

 しかし次の瞬間には、いぶかしげな顔をして

「なんで上は着けて来ないのに、下は着けて来たの?」

と真面目な顔をして訊いたので、瑠色は思わず吹き出した。

「ノーブラ向きの季節でしょ。上着が厚手になって、乳首が透けない。だ・か・ら、しばらくは、ずっとノーブラで来てアゲル」

「それなら、パンティもはかなくていいじゃない?」

力斗は、サーモンピンクの小さい布地を瑠色の両脚から脱がせ取り、ひょいとソファの端に放った。


暑がりで、11月いっぱいまで半袖のポロシャツ1枚で平気な顔をしている力斗には、パンティー無しではスカートの下がスウスウして寒いことが、分からないようだ。

「春になったら、ずうっとノーパンで来てアゲル」

そう言って彼の首にしがみつく瑠色の腰を抱き締めると、力斗はうんうんと、嬉しそうにうなづいた。

「エッチね、力斗は」

瑠色は、彼の頬を軽くつねった。

「エッチなのは貴女あなたの方ですよ」

力斗は優しく、しかし素早くキャミソルを脱がせると、全裸の瑠色をしみじみ眺めた。

「そんなに見ないで……電気を消してね」

「どうして?こんなに綺麗なのに」

力斗は熱っぽい視線を向けて、瑠色の真白い乳房を手の甲でなぞった。


普段はシャイで、感情をあらわにすることはめったになく、口数も少ないくせに、こういう時は情熱を隠さない。


瑠色は、力斗の視線から逃れようと、顔を横へ反らした。

「お顔もよく見せて」

彼は瑠色の左頬を右手のひらで包むと、自分の方へ向け直し、じっと見つめた。

可愛かわいい……」

そういかにも愛おしげにささやくと、小鳥がついばむように、瑠色の顔中にキスをした。


力斗は唇を離しても、瑠色の頬に手を当てたまま、自分の方へ顔を向けさせ、なおも見詰める。

「恥ずかしい……」

「可愛いよ」

力斗は彼女をソファに優しく押し倒した。


「ねえ……」

うなじや胸元を吸われながら、瑠色はいた。

「ノーブラ、ノーパンがいいと言うけれどぉ……アッ…」

力斗の唇に乳首を挟まれ、瑠色は思わず腰をよじる。

「うん…?」

「……エッチな下着を見たくないの?」

瑠色はこれでも、の下着を何枚か揃えているのだ。女心としては、そんな下着のオシャレも見て欲しい。

「貴女の裸以外は興味ないなぁ……。洋服も下着も、少ない方が良いです。脱がせている時間がもったいない。早く抱き合いたいでしょう?」

「そうなんだ……」

(下着より、ハダカなんだ)

正直すぎて、可笑おかしくなってくる。


そう言えば、初めて結ばれた後、力斗が出張先へ向かう新幹線の中から、こんなメールを送ってきたことがあった。

「朝から、貴女のからだが欲しくてたまらなくなっています」

瑠色は、声を出して笑ってしまった。

(だって、あんまり素直なんだもの)

「ねぇ、力斗」

「なあに?」

力斗は、子供1人産み終えた中年女のものとは到底思えぬ、マシュマロのような両の乳房を愉しみながら応じた。

「お付き合いして間もない女性に、カラダが欲しいとか、ハダカ以外興味ないなんて言ったら……ウウン……!」

力斗の舌が、瑠色の乳房の縁をなぞり、脇の下へと這っていく。

「……なのかしらって、誤解されると思わないの?」

「そうですねぇ……馬鹿ですね、私は」

力斗は顔を上げると、ニコリと笑った。

「仕方ないです。本当のことだから。貴女と極限までくっ付きたくてたまらないんです。これ以上1つになれる方法があるなら、それがいい。でも今のところ、これしかないでしょう?貴女と肉体的に最も近付くには、素肌を合わせる以外に方法がない」


そうか、下着にお金をかけるより、素肌に磨きをかけるべきなのだわ、と瑠色は納得した。

(でも、私の肌を最もピカピカに磨いてくれるのは、あなたなのよ)

瑠色は、自分の胸に一心に顔を埋めている力斗の頭を、ぎゅっと抱えた。

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