第7話 his~ゲイの父親と親権
冒頭、
「迅。別れよっか」
と渚(藤原季節)に切り出され、迅(宮沢氷魚)は彼と別れることに。別れで始まる物語です。
数年後、六歳の娘を連れた渚が、迅の前に現れる。
そのまま同棲、愛が再燃、移住先の田舎町での軋轢。なかなかの問題作です。
父親の親権争いというと、懐かしの名作「クレイマー、クレイマー」を思い出します。アメリカでも親権は母親にいくのが主流だった70年代。片や、21世紀になっても親権は母親に行くのが主流の日本。ましてや本作では、父親は職業の定まらないゲイ、恋人と暮らしているし。裁判で、妻の弁護士は迅を「不倫相手」とみなします。
評価は高い方ですが、やはり賛否両論。
中には、「ゲイの脚本家なら、こうはならなかった」的なゲイのご意見もありますすが、そうでしょうか。本作を支持するゲイもいるし、すべてのゲイが満足できる脚本を、ゲイだからという理由で書けるものですかね。
大昔、ゲイ雑誌を読んでいると、「結婚して子供も欲しい」との投書が。しかし、その結婚は、妻にゲイであることを隠して、だろう。一体、妻になる人の心をどう思っているのか。と疑問でした。夫の部屋からゲイ雑誌が出てきた、と悩む妻の手記が載ることもありました。
妻は渚を「だました」となじりますが、子供ができて結婚を決意した渚は、ある意味、誠実な気もします。逃げることもできたはずですからね。
妻も毒母に苦しめられた過去があること。
身勝手さもあった渚が、妻のつらさも見つめて謝罪する。ラストでは、四人の新たな関係が築かれていく予感。
ご不満の向きもありましょうが、日本でもやっとこうした映画が作られるようになった。まだこの程度、とも言えますが、それが日本の現状です。停滞の中に一石を投じられたことに意味があると思います。
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