第5話 あゝ、荒野~ボクシングは、つながれる
菅田将暉が若手演技派として広く周知された本作。
公開当時、絶賛され、主演男優賞を総なめでしたね。
寺山修司のボクシング好きは知ってましたが、いったい、どんな話なのか。なぜ60年代の小説が今頃、映画化されるのか。そんな興味もありましたが、メインはやはり菅田将暉の演技と、ボクシングシーン。あ、別に詳しくはないです、ちょっと井上尚弥が好きな程度で。
コーチ役のユースケ・サンタマリアが「スポ根じゃない。青春映画」と言ってますが、そんなのわかってますよ。寺山がスポ根もの書くわけないっしょ。しかし青春映画とも違う気がする。
そもそも、ここで取り上げるからには、普通の映画なワケないんですよ。詳細は、この先をどうぞ。
基本、ネタバレです。ラストはぼかしてありますが。
主人公二人の家庭環境等は仕方ないけど、「?」なエピソードが多すぎて、私はけっこう飛ばしました。それでも十分に楽しめたので、ご興味ありましたら、怖いもの見たさで、是非どうぞ。
前篇。
舞台は2021年、つまり今年です。
東京オリンピックの翌年、という設定ですが、コロナのお陰でオリンピックは延期、まさに事実は小説より、映画よりも奇なり。
ネオンの荒野、新宿。複雑な過去をもつ新次(菅田将暉)が健二(ヤン・イクチュン)と知り合い、ボクシングを始める。けんかっ早い少年院帰りの新次。韓国人の母をもつ31歳、童貞、吃音、赤面症の健二。全く違う二人は急速に親しくなっていく。兄貴と呼んで健二を慕う新次。
ボクシングは、どこがいいのかと問われ、健二は、
「ボクシングは、つながれる」と応える。
新次との絆を何よりも大切にし、ボクシングは弱くても新次のそばにいたい健二。
因縁の相手、裕二(山田裕貴)を倒すべくトレーニングに打ち込む新次。対戦相手を憎み、どんどん勝ち進み、対戦する日も近そう。美しい二人の対決、期待がふくらみます。
リングの上では相手を殺しても罪にはならない。
「殺してやる!」と叫び続ける新次の姿は、鬼気迫る、とか圧倒的、とか、狂気をはらんだ、などの手あかのついた言葉では到底、言い表せない。菅田将暉、おそるべし。
後篇。
舞台は2022年。
ついにやってきた裕二との決戦・血みどろの戦いはしかし、どこか消化不良気味。
「これでよかったのか?」
勝った新次も不完全燃焼。目標を失ったかのような、うつろな瞳。
てっきり裕二との決戦がメインだと思っていた私も、この先どうなるのか展開が読めず戸惑いました。
と、ここで再度、健二が登場するんですね。
弱気を撥ね除け、他のジムに移籍し、猛スピードで勝ち続ける。
憎からず思っていた美女に夜道でキスされる健二。やっぱり強くなるともてるんだね、卒業だね、おめでとう!
が、ホテルで裸になってるのに、
「僕は、貴女と、つながれない」
どゆこと?
阻害してるのは心かカラダか、はたまたプラスアルファか。
健二が希望し、新次との対戦が決まる。コーチは、今のお前では健二に勝てない、と。それほどに、健二は強くなっていた。
新次はつぶやく。
「あいつは、俺とつながろうとしている。その手には乗らねえ」
戦闘のゴングが鳴る。
獣じみたファイティングの開始。
壮絶、という言葉が陳腐すぎて恥ずかしい。
膠着し、クリンチが増え、「ホ×ってんじゃねーよ!」とヤジが飛ぶ。
クリンチ、どうしても抱き合ってるように見えますもんね。
健二のモノローグ。
「愛してほしい」
リングで愛してほしいとは、どういう意味なのか。
新次から「殺してやる」とは言ってもらえなかった健二。あれが彼の愛情表現だった?
こんな戦いは、許されない。
これを戦いと呼んでいいのかも、わからない。
トンデモない熱量の菅田将暉に、ノックアウトされました。
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