第21話

「いやァーーーーーーー!!!!」

三浦琴音はいきなり絶叫した。

「え、ちょ、どうしたんだよ、いきなり!」

「嫌!いや!イヤーー!!!」

彼女は近づこうとする俺に手足を振り回して、小さい子供のように暴れてしまっている。

「ちょっとまて!落ち着けよ!」

「いや!やめて!こないでよ!」

彼女は聞く耳を持たない。

「何があったんだよ!」

「こんなのいやァー!!!!」

彼女の暴れ方は激しくなり、テーブルの上のバームクーヘンに彼女の腕が当たった。

テーブルの外へと投げ出されたそれは、絨毯の上にべちゃりと落ち、形はぐちゃぐちゃになってしまった。


「なんで私の大嫌いなものを持ってきたの!最低!こないでよ!」

「待ってくれ、一回落ち着け!」

「嫌!いや!帰って、もう帰ってよ!早く出てって!!」

俺は彼女に一方的に押し出され、抵抗できずに部屋の外に出されてしまった。

どうすることもできないので、とりあえず彼女のお母さんを探してみたが、買い物に行っているのかいなかった。

仕方なく俺は家に帰った。


………


………


彼女の障害は、もうかなり深刻なところまで進んでいた……


記憶の喪失だけでなく、急激な好みの変化、感情の制御でさえもできなくなっている。


ここまで来ると、今まではどうにかなっていたことも、そうはいかなくなってしまう。


普通に、生活することでさえ………

できなくなるかもしれない………


このままじゃ………


このままじゃ彼女が壊れてしまう!

そんなのいやだ!ダメだ!ダメなんだよ!


………………


何もかも忘れていく彼女を………


崩れ始めている俺たちの関係を………


現実は厳しく、味方してはくれなかった………

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