第20話

11月15日

三浦琴音の誕生日の1週間前、俺は誕生日プレゼントをどうするか悩んでいた。

手っ取り早いのは文房具やストラップキーホルダーだが、いまどき文房具をプレゼントされたって嬉しいだろうか…

女子同士が渡し合うというのはよく聞くが、男子が渡すという例はあまり聞かない。

かといってストラップはもう懲り懲りだ。

服なんかも喜ばれるだろうが、俺のセンスは正直良いとは言えない……

ん〜思い出せ………

何をあげたら琴音は喜ぶんだ?

琴音が好きなもの………

思い出せ、いままで琴音が言っていたこと…………

……………………あっ


そうだ、バームクーヘン!

たしか修学旅行の自由行動で好きだと言っていたはずだ。


流石に京都の最強バームクーヘンは高すぎて買えないが、そこらのやつならかってあげられる。

ケーキも食べるだろうからミニサイズのものを探してみよう。


そして、11月22日


俺はある店でミニサイズのバームクーヘンを買ったあと、琴音の家に向かった。

北野みなみは都合が悪く、いけないというので、今日は2人きりで祝うことになる。


家の前につくと、俺はあることに気づいた。

そう、三浦琴音の家に上がるのはこれが初めてなのだ。

そのことを意識すると、少し緊張してきたが、なんとか腕をあげ、人差し指をインターホンに押し付けることができた。

ピンポーンという音の後に

「は〜い」

と、聞こえてきたのは琴音の声だった。

「あ、俺だよ」


そのあと、玄関のドアが開かれた。

琴音はワンピースのようなものを着ていて、かわいかった。

その姿に思わず見惚れていると、

「どうしたの?」

と、笑われながら言われてしまった。


2階の琴音の部屋に上がり、彼女のお母さんが飲み物とクッキーを持ってきてくれた。


誕生日会といえど、そんなに騒ぐこともなく時間が過ぎていった。


「そろそろプレゼント渡さないとね」

「やった!楽しみだよ!」

「じゃあちょっと目つぶってて」

「え、なんで?」

「いいから」

そういうと、俺は横に置いていた紙袋を琴音の前に持っていき、紙袋に両手を突っ込んだ。

そして、バームクーヘンを取り出して、プラスチック容器のふたを外した。

「目、開けていいよ」


すると、琴音はそっと目を開けて、バームクーヘンを見た時

「え!……………」

と、驚いて固まってしまった。


「ど、どう?喜んでくれた?修学旅行で好きだって言ってたから喜こ…………………ん、琴音?」


彼女の様子がおかしい。

バームクーヘンを見て驚いてから、ずっとそれを見つめたまま固まっている。

「琴音、どうしたんだ?………」

と、俺が、彼女の視界に入ろうとした瞬間


「いやァーーーーーーー!!!!」

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