第19話

あの日は帰ってひたすらに悩んだ。

どうすればいいんだろう。

それは、今回のことだけでなく、これからのことにも言えることだった。

あんな勘違いは防ぎようがない。

良くも悪くも、最近は悪い方が多いけど、忘れられては話が噛み合わなくなる。

俺には無理だったのだろうか………

琴音はどう接してあげればいいんだろう………


とにかく、今は明日のことだけを考えよう。

そうして、一晩考えた結果、見事に何も浮かばなかった。


とりあえず、また琴音の反応を見よう。


そう思って、教室のドアを開けると

「あ、おっはよう!」

と女子生徒に挨拶をされた。


ん、いや、しっかり見てみると琴音だ。

話してはこないとばかり思っていたから、自然と琴音ではないとおもってしまったのだ。

「あ、うん、おはよう…」

いや、待て待て待て。

どういうことだ?昨日のことは許したのか?

昨日は一切口を聞いてくれなかったのに………

「琴音、あのことは……もう………いいのか?」

「ん?あのこと?どのこと?」


……………………!?


伝わってない!


嘘だろ………


………………………………


最近どうもおかしいと思ってた…


早い、いくらなんでも早すぎる。


そんな………………


もう、かなり進行しているんだ……


……………………


……………………記憶障害が……


修学旅行の土産の時、ラブラップの時、そして今日!

どれも一晩で忘れている…


学校のことや人の名前は覚えている。忘れる対象は何だ?

一晩で忘れてるものは、どれも印象的だ。

そういう、刺激の多いものは脳がけしてしまうのか?

それともランダムか………


…………………


くそっ!!やめてくれ…………

もう、これ以上琴音から奪わないでくれ…………

このままじゃ………何も残らなくなっちまう………


…………そうだ!

せめて俺が思い出を増やしてやろう。

何度思い出を消されようと、作っていけばいい!


花火大会のあの日、RINEを交換したとき、彼女のプロフィールをみた。

そこに書いてあった誕生日。

それがもうすぐだ!


彼女に何も残らないなら、あげればいい。


それが、せめて俺が彼女にしれやれることなんだと思う……

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