第18話
ラブラップ……
少し前に超人気俳優が交際中の人気女優に渡したことが、若者の間でとてつもなくブームとなり、昔に流行ったタピオカの二の舞のようになっている。
ハートの宝石型のプラスチックの中に金色の小さいリングが入っているというもので、元々値段は少々高かったのだが、絶大な人気により原材料のコストを下げて、今ではそこらのストラップと変わらなくなった。
もちろん、俺はその存在を知っていても、自分にとっては異世界の話だと思っていたので、まさか女子からもらえるなんて思ってもみなかった。
実際に見てみると、これが大ブームになるほどのものとは正直思えないが、琴音からもらったものと思うだけで価値が膨れ上がる。
近々、俺からも渡さないとな……なんて思っていると教室に着いた。
ドアを開けて入ると、今日は琴音が先に来ていた。
「おはよう!」
と、わざとらしくカバンを揺らしてストラップをアピールしてみた。
彼女もこっちにあゆみを進めて
「おはよう」
と、挨拶を返して終わると思っていたのだが……
突然、彼女の様子が変わった。
なんだ?なんなんだ?
ストラップのことは昨日許したぞ。
なにか、変わったことあったか……?
彼女の表情からはいまいちこれと断言できる感情は掴めなかった。
ただ……
驚いているような、悲しみもあるような…………
よくみると怒りも混ざってるように見える。
どんどん何故かわからなくなってくる。
俺が混乱し始めていたとき、琴音は口を開いた。
「それ…………」
その声は、震えていた。
琴音は俺に向けて指を指していたが、その方向はおそらくストラップだ。
「え………」
俺は聞きたいことが山ほどあったが、何を聞いていいかもわからなくなっていた。
「そのストラップ………」
今度は怒りが混ざっていた。
というか9割がた怒ってた
「え、これ?これがどうし……」
俺の言葉は届いておらず、言い終わる前に琴音は言った。
「誰?」
は?誰ってどういうことだよ。
「ねぇ、誰なの?誰からなの!」
「え、ちょ、琴音落ち着け。」
またしても、俺の言葉は届いてない。
誰から…………どういうことだ?
ストラップをもらった人のことを指しているなら琴音からだ。
誰からかを聞くということは、ストラップのことは知っているはず。
その上で誰から…………?
もしかして…………………
「もう許さない!絶交するから!」
「おい、まてよ……琴音!」
もしかして………忘れてるのか!?
三浦琴音は自分の席へ戻ってしまった。
不運なことに、偶然にも、たまたま、俺たちは教室の両端、しかも琴音は1番前で俺は1番後ろの席。
つまり、教室で1番離れている。
いつもはちらちら振り向いてくる琴音だが、今日はノーチラだ。
放課後に呼び出そうとしても、オール無視。
何度声をかけても無視無視無視、無視の渋滞。
あのストラップが恋人に流行ってることを覚えてる状態で、俺に渡したことを忘れたということは………
琴音からしてみれば、俺が他の女子からストラップをもらって、それを嬉しそうにつけて、さらには彼女である自分にわざと見せつけた………
それってやばくね?
捉え方によってはお前よりもそいつを選んだと言ってるようなものだ。
そうか、それで琴音は誰からと聞いたのか………
それがわかったところで、琴音には「あのさ」のあも聞いてもらえない。
今回ばかりは本当にまずいかもしれないな…………
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