第13話

レクリエーションが終わり、自分の生活班の部屋へ入ろうとした時、平松亮平(俺の親友、1話参照)が声をかけてきた。

「おい、ちょっと話そうぜ。」

「え、別にいいけど。」


俺たちはホテルのロビーのソファーに座った。

うちの学校は就寝時間までに部屋に戻れば、それまでの行動は自由だ。

だが、レクリエーションが終わってすぐは、みんな疲れていて、すぐに部屋に戻る。

よってロビーには俺たち2人しかいない。


「なぁお前さ、三浦琴音とつきあってんだろ?」

「え?なんで知ってんだよ。」

三浦琴音と付き合ってることは、俺はまだこいつに話していなかった。もちろん他の誰にも。

琴音が喋ったとも思えない。

「いやバカか?w教室で見かけるたびにあれじゃ誰でもわかんだろ。」

そういうものなのだろうか……

(てことはクラスの奴らにもバレてるのか?………まじか………)

「まぁ、そうだけど……」

「んで?どこまで行ったんだ?」

「どこまでって?」

「わかんだろ?」

「なんなんだよ(わかってるけど)」

「恋のABCだよ。わざわざ言わせんじゃねぇよな。」

じゃあ言うなよな。

「特に手も繋いでねーよ」

「うん、分かってた。」

「じゃあ、聞くなよ!

いちいち腹立つやつだな……」


すると、2人組の女子がロビーに入ってきた。

そして、自販機で飲み物を買って、出て行った。


…………………


「お前さ…………あいつのことまじなんだろ?」


「おう。」


平松は真剣な顔で………

そして、どこか大人っぽい雰囲気をしていた……


「でもな、記憶障害を持ってるやつと付き合うのは簡単じゃねーぞ。」


「え?」


「単純なことだ、いつ忘れられるかもわからない。」


「大丈夫だ!彼女は俺のこと……」

「忘れない…………………

とでもいうのか?

そんな保証はひとつもねぇだろ?」


「……………」

たしかにこいつの言う通りだ。


「あいつと付き合うなら…………


あいつを好きになるなら、忘れられてもいいと思わなきゃならない。


理不尽な理由で簡単にフラれることを、彼女のために受け入れなければならない…………


その覚悟が…………


お前にはあるか?」


…………………………


そして、平松は何も言わずにロビーを出て行った。


…………………


俺は………何も答えられなかった。

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