第5話

やばい……

勢いで送るとか言ってしまったが、この状況ってなかなかやばいだろ。

クラスの女子が、0mmとなりであるいてるんだぞ。

しかも、なんとなくでしか見たことなかったけど、よく見たらまぁまぁかわいい………


………………。

そんな状況でさえも、やはり彼女が障害を持っているということを意識してしまう。その障害がどんなものかは詳しく知らない……

でもみんなが避けるような、そういう人ではないんじゃないか?……………

そう、思えそうだ。


1時間半くらい歩いて、やっと彼女の家に着いた。

玄関からはさすがに入れないので、ここで帰らないといけない。

「ありがとうね……えっと………」

ん?なにを聞こうとしているんだ?

「ごめんね、名前なんだっけ?」

「あーなんだそんなことか、

俺は………」

その時、

「あ、やっと帰ってきたの?自転車じゃないからって、こんなに遅くはならないでしょう?」

彼女の母親らしき人が玄関から出てきた。

「あ、三浦さんすごい熱なんです。すぐに寝かせてあげてください。」

「え、熱!ほら、早く入りなさい。」

そう言われると三浦琴音は一度こちらに手を振ってから家に入って行った。

「あの、送ってくださったんですか?ありがとうございました。」

「あ、いえ」

「気をつけて帰ってくださいね」

「あ、はい、さよなら」


それからきた道を戻り、45分くらいかけてやっと駅に着いた。


家に帰ると8時を回っていた。

死ぬほど歩いたので足は筋肉痛だ。でも、そんなことは正直どうってことなかった。

ベッドの上に寝転び、なんとなく胸に手を置いてみる。

ドクッドクッっと生々しい心臓の音が聞こえる。

本当にドキドキするんだな、こういう時って。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


家に入ってからすぐに布団に入った。

同級生の男子とあんなに近くに、しかもあんなに長い間一緒にいたことなんて一度もなかった。

さっきからドキドキしてる………

熱のせいかな……?……

それとも……


あの人、私を置いて行かずに送ってくれた。駅から遠いって言ったのに、それでも私を優先してくれた。

いい人だな…………

もっと話してみたいな………

仲良くなりたいな………



私、あの人のこと気になってるな。

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