第3話
これでもかというくらい静まり帰った教室に、ただひたすらシャーペンを走らせる音だけが止まない5月7日の6限目。
20分間続いたその光景は、女性教師の一言でピリオドをうった。
「はぁ〜い、おわりね。プリント後ろから回収〜。」
そう、文字通り俺は時間ギリギリで最後の英文のピリオドをうち英語の小テストを終わらせた。
すると、前の席から1人の男子生徒が振り向いてきた。
「お前できた?」
「俺が英語苦手なの知ってて言ってるだろ。」
「え〜そうなぁんだぁ〜知らなかったぁ〜へぇ〜」
この腹立つ言い回しをしてくる奴は、田中快斗。最近、俺がつるんでるやつだ。2年が始まって1ヶ月近く、クラスの各固定メンツもある程度決まってきた頃だ。
「そういうお前はできたのか?」
「あたりまえだのクラッカー大盛りパクパクッ!」
俺は流石にくだらなすぎて、立ち去ろうとした。
「ちょっとまてちょっとまてお兄さん!!ラッスン……」
「まだ続けんのかよ。」
「いやいやお兄さん。ノリには乗らないと友達できないよぉ。このままじゃ、本が親友なんてことも、充分アリエールでしょ。」
「いいんだよ。俺は本が好きだ。なんなら付き合ってやるよ。」
「え、まじ?それは流石に引くわ」
「バカ、ひいてろ」
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「ねぇ、さっきの小テストできた?」
下校中、私の友達の北野みなみはそう聞いてきた。
「ん〜まあまあかな」
「ん〜なんでもまあまあって言えばいいって思ってるのかな?」
「そんなことないって」
「琴音さ、最近元気なくない?」
「そ、それもそんなことない……よ」
みなみちゃんは中学からの友達で、いっつも心配してくれるんだけど、ちょっと心配しすぎに思う。
たしかに、私は心の……病気?っていうのを持っていて、直接いじめられたことはないにしろ影で変なやつって見られてるのはわかってる。だけど、もう慣れたし今ではみなみちゃんの方がよっぽど不安がってる。
「ねぇ、私もうそんなに心配してくれなくても大丈夫だよ。」
「そう?………んーじゃあ、もうちょい元気に振舞いなよ!可愛い顔が台無しだよんっ」
「え、いや、そんなこと」
「んじゃねっ!」
彼女は電車だからこの駅で別れることになる。
「ちょっとぉ……」
決断力と行動力が早い北野みなみは三浦琴音にとって憧れの存在だ。
ちなみに北野は去年引っ越して、電車通学となった。三浦は自転車通学だが、パンクのため今日は徒歩で登下校している。
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「じゃあな」
「おぉ、また明日」
平松と別れ、俺は駅へと歩いていた。2年になってから、クラスが違うためほとんど話す機会がなくなった平松とは、放課後こうして長いこと喋るようになった。流石に遅いと親がうるさいので、そろそろやめなければならないのだが。
駅への道は複雑ではないのだが、なかなか遠い。ブルベリ高校の生徒もちらほら見かけるが、そもそもこの辺りは人気がなく、この時間帯だと少し危ないらしい。
そのことを思い出していたとき駅が見えてきた。別に怖がっていたわけではないのだが、少しほっとした。
まさに、その時だった。
いきなり後ろから誰かに肩を叩かれたのは………
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