第4話 ドロップ

「でも固有スキルってのはそんな驚くほど珍しいんですか?」

「そりゃ、そうですよぉ。固有スキルの出現率は宝くじの一等が当たるくらいの確率って言われてるんですから」


 おぉ良い例えをしてくれる。こう言われるとなんだかレアな感じが伝わってくる。

「しかも、名前を見た感じだと探索向きのスキルな気がしますね」


 まじかよ。俺のダンジョン人生、幸先のいい出だしじゃないか。おぉ、固有スキル。なんといい響き。


「これだったら、ほかの人にパーティに誘われるかもしれませんよぉ」


 ホントにっ?

 人生バラ色じゃないか。

 頭の中で、バスタブいっぱいに金を敷き詰め、そこに埋もれる自分の姿を想像する。

 いろんな夢が……、膨らんでいく。


 とりあえず付与が終わり、同時にアマチュア探索者のライセンスが交付されたので、付与センターから出ていく。


 すると、付与センターの出口前には多くの人が並んでいた。並んでいた人々は俺をスカウトするために待っていたのだ。


「頼みます。俺とパーティを組んでください」

「リーダーにしてあげますから……、うちに」

「こっちだったら……、あっちのパーティの倍は出すから……」


 やっべ。俺、人気者じゃね?

 多分、その瞬間人生で一番調子に乗っていたんじゃないだろうか。


 いろいろなパーティの人から話を聞いたけど、結局俺が選択したのは黒田のパーティだった。

 理由はめちゃくちゃ単純。

 

 成上奈苗という美人がパーティにいたから、これに尽きる。

 俺も男だもんしょうがない。欲に忠実に生きないとストレスたまっちゃうからね。


 あとは、条件に関係なく俺のスキルが本当に強いならばパーティーがどこであろうと関係なく稼げるんじゃねーのという甘い考えが理由の一つだ。

 だったら、おっさんばっかのむさくるしいパーティなんかよりも、美人と一緒に探索した方が俺のQOLが爆上がりするだろって結論に至った。


 ただし結論いうと…、成上は黒田と付き合ってた。

 何ならパーティでダンジョン潜ってる最中も俺や磐田に隠すことなくいちゃいちゃしてた。


 手持ち無沙汰になった俺は、もう一人のメンバーの磐田とコミュニケーションとろうと思ったけど、共通の話題がなかったのであきらめた。


 そしてもう一つ問題が起きた。

 それは俺の固有スキル【ドロップ】が使えないスキルだったということだ。その名前から、モンスターからアイテムを確定ドロップさせることでゲットできるとか、レアアイテムをドロップさせるとかだと想像してた。


 でも、実際には謎の黒い球をドロップするだけで、しかもこの球は、何にも使えないし、売れないときたもんだ。


 しかもそれだけならまだいい。

 加えて俺のレベルが全然上がんないってことだ。どんだけ倒しても手に入るものは黒い球だけ、経験値もアイテムも手に入んない。そのせいでパーティメンバーとのレベル差はだんだんと広がっていくばかり。


 そして、パーティを追放された俺に残ったのは、スライムからドロップした謎の黒い球×100と、4万円の赤字のみだった。

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