第2話 出現
ダンジョンが出現したのはつい2年前のこと。
ちょうど一人暮らしを始めたタイミングだった。
最初に東京に出現したダンジョンはいまでこそいろんな人が探索したりしているが、最初に出現したときは、それはもう大騒ぎだった。
たしか、ダンジョンの半径1kmは規制線が張られて立ち入り禁止になってたような気がする。
その時はどこかの国の攻撃だとかいろんな意見があったけど、結局、ダンジョンの出現理由は今だ解明されていない。
結局そのダンジョンが出現した後に、全国各地に続々と出現した。
その後、ステータス付与水晶なるものが発見され、手をかざすことでステータスが付与されるとわかった。そのステータスを活用することで、我々人類がモンスターに対抗することができるようになった。
すると今までの常識は一変した。
ダンジョンを探索しモンスターを倒しアイテムを採取できるようになったことで、新たにダンジョン産業が産声をあげた。
誰もがダンジョンに潜り、アイテムを採取や売買を行うことで稼げるようになった。
副業として潜るもの、本業として潜るもの、趣味として潜るもの理由は様々あったが、いつでもだれでもどこへでも潜れ、そして稼げるという事実は多くの人を魅了した。
現に主人公で、大学生の田中秀明もアルバイトより稼げるというネットの記事に触発されてダンジョン探索を始めた。一人暮らしだから意外とお金がかかるため、ただお金が欲しい、その理由だけで始めたのだ。
最初の田中の投資は武器。武器がなければ何も始まらない。
専門店で試しに剣を持ってみたところ重たすぎてこりゃ振り回せないと思った田中は短剣を購入した。お値段約1万5000円。短剣に刻印された謎の英語が気に入っている。
次に心臓だけは守らなければと思い購入した胸当て。
これはネットショッピングで新生活応援セールなるものをやってたから購入した。
セール価格だったので5000円。あまりにも安すぎて心配だったけど、実際届いた商品はなんの問題もなく使えたのでオッケー。
最後に靴だ。
動きやすく、かつ壊れにくいものを選んだ。
地味にこれが一番の出費になった。お値段約2万円。
靴屋の半額券を持っていたから調子乗って高いの買おうとして、意気揚々とレジまで行って割引券を出したところ「この商品にはご使用いただけません」と言われたのだ。
でも、「じゃぁ、買いません」という勇気のなかった田中は「じゃ、じゃぁ、大丈夫です。そのままのお会計で」と言ってしまったためそのままのお値段で購入したのだった。
合計4万円の投資。そこまで大きい額とまでは言えないが時給1000円で40時間分。ケチな田中にとってはかなり痛手だ。
それでもネットの記事によれば
《学生でも月100万も可能?誰でもできる簡単ダンジョン探索!》
なんてものもあったからすぐ回収できるだろうと思っていた。
ダンジョンに潜るまでは――――。
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