固有スキル【ドロップ】が使えないって言われてパーティから追い出されました。でも、スキルの本当の使い方がわかったので強くなります。

白洲大知

プロローグ

第1話 追放

 ゴンッ。


 俺は肩を思いきりどつかれ、姿勢を崩す。

 頭がダンジョンの壁に当たり鈍い音がする。

 

「いっ、てぇ」


 ものすごい剣幕で、パーティのリーダー黒田正義が俺を攻め立てる。

 黒田は俺と同じくらいの身長で、茶髪のチャラチャラした雰囲気の男で、武器は剣。このパーティを作ったやつで一応リーダー的ポジションにいる。

「あのさぁ、俺たちフリーの探索者がダンジョンに潜る理由くらいはさすがにわかってるよなぁ」


「そりゃぁ、わかってる。わかってるけど――」


「ならなんでお前はアイテムを全く採取しないで、こんな変な黒い球を持ってくるんだ? おい。いってみろよ」


「それがよくわかんないんだよ。俺がモンスターを倒すとその黒い球しかドロップしないんだよ」


「うんうん。仮にお前の言うことが正しいとするよ。ひとまずな。でも、これが何になるんだ? この前鑑定しに行ったら、よくわかりませんって言われたのはお前も知ってるよな」

「これが売れればまだよかったさ。金になれば、な。でも金にすらなんないんだったらこんなもん集める必要は」

 すると黒田は黒い球を地面に思いっきり叩きつける。

 謎の黒い球は地面に衝突したあと、悲しげにころころと転がる。

 最終的に壁にぶつかりにその運動を止める。


「ねーーよなぁあ」

「ごみを集めてただけってことだぞ。お前はぁーー。一か月間。ずぅぅーーっと。わかってんのか」


 確かに俺は黒い球だけしか持ってこなかった。けど、モンスターは一応倒してはいたからパーティランキング(どれだけモンスターを倒せたかのランキング。上のほうに行くとスポンサーがつく)維持に貢献してた。しかもそれだけじゃ足りないと思って、ダンジョンの下調べとか、モンスターの情報とか調べて円滑に探索できるようにしたじゃないか。しかも、アイテム換金できない分無給で。

 予定があっても呼ばれたらすぐに集合したり、自分のことを考えずに貢献してきたつもりだ。ちゃんと働いたという自負が俺にはある。なのになんでだ。


 ふぅぅぅ。

 興奮を抑えるために大きく息を吐く黒田。

「もういい。キレんのも疲れた。お前、このパーティを抜けろ。必要ない。アイテム取れない、金稼げないなんて奴は要らん。出ていけっ」


 様子を見ていたパーティメンバーで、回復役の成上奈苗が黒田に追随するように

「私も正直失望したわ。あなたの固有スキル【ドロップ】が使えると思ってパーティに入ることを認めたのに、ごみを大量生産するくそスキルだったとわね。私も正義と意見は一緒。あなたは要らないわ」


「おいっ。磐田はどーなんだ?」

 黒田はもう一人のパーティメンバーの磐田守に問いかける。


 磐田守は物静かな男で俺は今までほとんど話したことはない。

 もともと何かの格闘技をやっていたらしく、ガタイがいい。特に、腕を組んでいるとその太さが際立つ。

「別に、俺は賛成の多いほうでいいさ」


「らしーーぞ。ということは、お前は要らないってことがこのパーティの総意らしい。これで俺も気兼ねなくお前を追い出せる」

「出ていけっ」


 こうして俺はパーティを追放されたのだった。


 俺をその場に残したまま黒田たちはダンジョンの先へと向かっていくのを、ただただ見送るしかできなかった。


 黒田たちが完全に見えなくなったのを確認してから投げ捨てられた謎の黒い球を拾いあげる。

 俺も黒田と同じようにやりきれない思いを発散しようと地面に投げつけようとしたけど、むなしくなって途中でやめた。

「俺もおまえもいらない奴だもんな。お似合いかもな。俺たち。ははっ」

 俺は謎の黒い球にこう語りかけながら、ダンジョンから出て行ったのだった。

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