第6話 アイテムボックス
「〈アイテムボックス〉」
今度は視界の右端にアイテムボックスに関するウインドウが映る。
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【容量】0 / 100
【収納物】
なし
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(なるほどな。このウインドウで管理できるのか。)
(アイテムボックスに入れるにはどうすればいいんだろうか?)
(〈収納〉物と言ってるし、〈収納〉か?)
「〈収納〉」
二枚に下ろされた巨大蛇の死骸をアイテムボックスに仕舞うことをイメージしながらそう呟くと、シュンッと死骸が消え去る。
「えぇーー! ですー!」
ヒナが突如消え去った巨大蛇の死骸にオーバーリアクションで驚く。
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【容量】8 / 100
【収納物】
- ビッグスネークの死体 〈取出〉
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視界の端に映るウインドウの表記が変わった。
(なるほどな。死体一つだけなのに、いきなり容量8か。どうやらアイテムボックスの容量は、個数ではなく体積とか重量で決まるようだ。)
(あの大きな巨大蛇……ビッグスネークか。そのままの名前だが、そいつが12匹分程度か。)
(なかなかいいじゃないか。この容量も今後増やせるのだろうか?)
(おや、〈取出〉というボタン?があるな)
俺は〈取出〉ボタンを見ながら、そこをクリックするイメージをしてみると、実際にシュンッと死体が現れた。
「ふぇーー! ですー! 何が起きてるですかー!」
ヒナがまたもや驚く。
その後何度か検証して、〈アイテムボックス〉と言った後、対象をイメージしつつ〈収納〉や〈取出〉と続けて口に出すか、〈取出〉の時だけはウィンドウのボタンをクリックするように頭で念じれば良いことが分かった。
俺が〈アイテムボックス〉を検証する様子を見て、目をまん丸くするヒナに声をかける。
「驚かせてすまなかったな。ちょっとビッグスネークの死体を仕舞っていたんだ」
「そ、そんなことができるですかー! すごいですー! もしかして、固有スキルですかー!?」
「そんなところ、かな」
「すごすぎですー! まさか、カガミュートおにーさんは名のある冒険者さんですかー!?」
「うーん、どうだろう? まだ冒険者ではないかな」
「じゃあなにしてる人ですかー?」
「うーん、なんだろう……無職、かな」
「あはは! すごいですー! 無職さんだなんてお金持ちなんですねー。わはー!」
「それが、今は一文なしだよ。冒険者になってお金を稼ごうと思ってたんだ」
(やっぱり異世界転生をしたなら冒険者だろう。)
(どうやら魔物を倒せるぐらいには強いようだしな。)
「そうなんですねー。羨ましいですー! カガミュートおにーさんなら楽勝ですよー! 私もいずれ冒険者さんになりたいのですー。わはー」
「へぇ。なんで?」
「冒険者さんは、強くて、自由で、憧れるですー!」
「冒険者ってそういうイメージなんだ」
「はいですー! 私も魔物を千切っては投げてお金を稼ぎたいですー」
ヒナはぶんぶんと腕を振り回して想像上の魔物をやっつけている。
「ですが今はこうして薬草を……って、あ! 集めた薬草がないですー!」
ヒナは慌てて辺りをキョロキョロ見回し、地面に落ちた袋を見つけると、それを両手で拾って大事そうに胸に抱いた。
「よかったのですー。あったですー。そういえば、カガミュートおにーさんもシロツメに戻るですかー?」
「シロツメ?」
「はいですー。すぐそこにある都市なのですよー。もしかして、カガミュートおにーさんはすごく遠くからきたですかー?」
「あ、あぁ。まあ、そんなところだ」
「わー、すごいですー! それじゃあ、私が案内しますねー」
そう言ってヒナは自信満々に俺を導いたが、結局道に迷ってしばらく歩き回り、何度も同じところを行き来してようやく俺たちは都市シロツメへとたどり着いた。
道に迷った道中でも、俺はずっとヒナとお喋りを続けた。今までの俺なら、何を話せばいいのかもわからず黙り込むところだったが、ヒナのコミュ力のおかげか不思議と会話が続いた。
(こんなにも女の子と喋ったのは、生まれて初めてかもしれない。)
ヒナは本当に屈託なくよく笑う子で、俺が何を言っても笑ってくれた。ダブルピースが癖なところも可愛らしく、会話をしていて心地よかった。
(やっぱ異世界転生は、こんなふうに最初にヒロインを助けて、そこから仲良くなるものだよな。)
(イキ女神の言っていた、ハーレム道、だっけか? それの効果かもしれない。)
(今後ヒロインであるヒナといちゃいちゃラブラブな展開になっていくのだろうか?)
(……大丈夫かな? 俺。だってエロ漫画と違って女神様に○ックスの手解きすら受けていない。)
(……まあ、それはいずれ考えよう。)
(ヒロインとも出会えたし、今の俺は、異世界転生の王道を突き進んでいるのだ!)
ヒナはしきりに「もー、ベタベタするですー。早く帰って洗いたいですー」と言っていた。彼女は気づいていないだろうが、その汚れには、俺が付けた汚れも含まれている。
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