第3話 転生

 転生した先はどこかの森の中だった。転生した瞬間魔物や山賊に襲われるわけでもなく、とりあえずここは安全な場所なようだ。

 俺はひとまず自分の体のチェックを始める。


(おや、これは……。)

(なんの変化もないぞ?)

(見覚えのある手だし、髪の毛を触ってみてもいつも通りの髪型だ。)

(……あれ、でも俺の手ってこんな感じだっけ? 不安になってきたな。)

(子供の頃カッターでつけた傷跡が左手の甲に残っているし、どうやら俺は日本での体そのままで異世界に来たようだ。)


 その場合異世界転生ではなく異世界転移なのではないだろうか?と思うが、俺はこれから生まれ変わって新しい人生を始めるのだ。転生で良いだろう。


 たとえ俺の体が今までと変わらずにオナニーのし過ぎによるニキビ面と脂ぎった髪の毛と貧相な肉体であっても、俺は新たな人生を始めるのだ。


 そう決意したところで、俺の耳はどこかから聞こえる人の声をキャッチする。


(……人が、いるのか?)


 もしかしたら俺の聞き間違いで魔物の鳴き声だったかもしれないし、人だったとしても悪党かもしれない。俺はこっそりと茂みに身をひそめつつ声の方向へと向かった。


 低木の葉の隙間から覗き込み、俺は3人組の男を見つける。


(……っておい! ドンピシャで悪党じゃねえか!)


 筋肉質の男が地面に地面に横たわる少女の服を乱暴に破り、残る2人のデブとヒョロはジャンケンをしていた。

 少女は服を破かれているというのに、微動だにしない。恐らく眠っているのか、気絶しているのだろう。


「デュフッ、俺の勝ち。二番手は俺な」


「くそっ。お前の後だと汗まみれできめーんだよ」


 デブがジャンケンに勝ち、ヒョロは文句を言っている。


「デュフフ、悪いな。デュフッ、このぐらいの子が、一番犯しがいがある」


「そうかぁ? 俺はもっと胸とか育ってて欲しいけどな。まあ、贅沢言ってらんねぇ」

 

(おいおい、これって、もしかして、もしかしなくても、レイプってやつじゃないのか!?)

(やべえな異世界! いきなりこれかよ!)

(こういう時って、どうすればいいんだ? やっぱ助けないとだよな?)


 筋肉質の男は少女の服を縦半分に破き終え、観音開きよろしく少女の身体の前面を露出させた。


(やばい、これはもう、犯される5秒前って感じだ。)

(この3人組をぶっ倒すしかない。)

(……でも俺は、この3人組に勝てるのか?)

(筋肉男なんていかにも強そうだしな……)

(まだ鑑定スキルや自分のステータスだって確認していない。返り討ちにされる可能性の方が高いだろう。)


 筋肉男は自分のズボンに手をかけてずりおろし、毛深いケツを露わにする。


(もし俺がこの異世界で死んだらどうなるんだろうか?)

(くそっ、イキ女神に聞いておけばよかった。)

(いや、そんなことは今はどうでもいい……どうすればいいんだ!?)


 筋肉男が気絶する少女に乱暴に覆い被さる。


(……そうだ、こいつらも○ックスしてる最中なら隙が生じるはずだ。その隙に、こいつらを倒すんだ。)

(今は無理だ。仕方がないんだ。デブとヒョロはまだ剣を持っている。これでは返り討ちにされて、俺も少女もやられてしまう。そうすると少女を助けることができない。)

(……そうだ、隙を見て攻撃するとして、武器が必要だ! 俺にも何か、何か武器はないのか!?)


 俺は少女がレイプされそうになるシーンを凝視しながら、頭をフル回転して彼女を助け出す方法を探したが、いい案は何も思い浮かばなかった。


「―――おいっ、見ろ!」


 突然、デブが焦りながら何かを指差して叫び、筋肉男がさっと少女から飛び退る。


「チッ。クソっ、タイミングの悪りぃ。ずらかるぞ!」


 筋肉男がズボンを上げながらそう言うと、3人まとめて脱兎の如く逃げ出していった。


 後には気絶した少女だけが残される。


(……どうしたんだ?)

(少女は、助かった……のか?)

(他の誰かが来たのだろうか?)

(……それとも、何かの罠か?)

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