第2話 十道
それにしても、イキ女神の言葉が本当なら、俺にはこれから『無○転生』とか『○スラ』のような異世界生活が始まるらしい。最高じゃないか。
俺は異世界転生小説が大好きだ。自分にもいつかあんなファンタジーが訪れると信じていたかったし、どうやら実際にそのチャンスが訪れたようなのだ。俺はワクワクを止められなかった。
「ち、チートは? チートはなっ、何かもらえるんですか!?」
俺は興奮して
「えぇ、もちろんチートもあります。ユートさんが行く先はいわゆるファンタジーな世界です。日本世界人であるユートさんは、チートがないとすぐに死んじゃいますからね」
「どんなチートですか? た、例えば、時を止めるスキルとか、スキルをコピーするスキルとかですか?」
「うーん、与えられるスキルは魂の特性によって変化するので、特定のものをお渡しすることはできないのです。ユートさんにはまず、どんな異世界転生道を歩むかの『道』を決めてもらいます。その選んだ『道』によって、実際に異世界に行ったら特別なスキルが生えてきたり、補正がかかったりしますよ」
そうしてイキ女神はすらすらと『道』について説明を始めた。
イキ女神曰く、『道』は10種類から成り、魔法道、体術道、仲間道、恋愛道、名誉道、富裕道、育成道、復讐道、ハーレム道、成長道の10種類らしい。
(……多いな。)
イキ女神は何もないところからポンっと1枚の紙を生み出し、俺に渡した。その紙にはイキ女神自身をキャラ化した可愛らしい挿絵と共に、このようなことが書かれていた。
−−−−−−−−−−
★日本世界人でも分かる十道解説★
① 魔法道
・魔法を極められる
・固有魔法も得られるよ!
② 体術道
・体術を極められる
・固有体術スキルも得られるよ!
③ 仲間道
・かけがえの無い仲間に恵まれる
・一生ものの仲間と出会えるよ!
④ 恋愛道
・かけがえの無い恋人に恵まれる
・後悔しない伴侶が見つかるよ!
⑤ 名誉道
・比類なき名誉を得られる
・人々は君を讃えるよ!
⑥ 富裕道
・莫大な富を得る
・一生お金に困らないよ!
⑦ 育成道
・弟子に恵まれる
・想いや技を継承してくれる人たちが現れるよ!
⑧ 復讐道
・復讐を完遂させる
・何かに恨んで復讐を成功させるでがワンセットだよ!
⑨ ハーレム道
・ハーレムを作れる
・好きなだけ作れるよ!
⑩ 成長道
・圧倒的に成長できる
・分野に関わらず成長できるよ!
−−−−−−−−−−
俺はしばらくその紙を眺めて、イキ女神に聞く。
「これって、例えば魔法道を選んだら体術は使えないんですか?」
「いえ、そんなことはないですよ。これはあくまでも、選んだ道を保証するものです。魔法道を選べば魔法の極地に至ることが保証されますが、努力次第では体術だって極められるかもしれませんし、名誉や仲間だって得られるかもしれません」
(なるほど……これは、悩むな……。)
正直まだこれだけをやりたい、というものはない。なんならどれもやってみたい。成長道にすればどの分野のスキルでも後から伸ばせるだろうか?
ハーレムだって作りたいが、魔法や体術に優れていればなんとかハーレムを作れるだろうか?
富裕道で金を持ってればハーレムだって作れるだろう。魔法を使いたければ金で雇えばいいかもしれない。やはり金か? 金は全てを解決するとソクラテスも言っていた気がする。
復讐道は……今のところ何かに復讐したいという気持ちはないが、復讐を完遂したらスカッとするかもしれない。それに、死んでも何かをやり遂げたいという気持ちは、たとえそれが復讐であったとしても、日本でのオナニー生活に比べたら充実したものに思える。
「悩んでますね、ユートさん」
「あ、あぁ。どれも良さそうで……。オススメとかありますか?」
「オススメですか? どれもオススメですし、自分で選ばないと意味がないですよ」
「そっか、うーん……」
俺はしばらく解説書を手に悩みまくった。どうしても一つに決められない。自慢じゃないが、俺は昔から優柔不断だ。飯だってキャンペーンとかオススメがないと決められないし、オカズだってp○rn hubを見てこれだ!という動画を選べずに100ページぐらい軽く遡ってしまう。
「全部……とかダメですよね?」
「全部ですか。不可能ではないですよ」
「ですよね……え? 出来るんですか!? じゃ、じゃあ、全部でお願いします!」
「分かりました。十道全てで登録しておきます。あと異世界言語や鑑定スキル、アイテムボックスは基本セットでついてますから安心してください」
(よっしゃあ! これはチート無双の予感!)
「ちなみに十道全ての登録は、通常想定している設定ではないのでどうなるか分かりませんが、とりあえずやってみましょう」
「えぇ!?」
驚いてる間に俺の体は、足の先からキラキラと光の粒子に変わって分解されていった。
「それでは、よい異世界ライフを」
にこりと笑うイキ女神に、俺は急いで質問を投げる。
「ま、待って! どうなるか分からないって、それって大丈夫なんですか!? あとっ、俺は、何で異世界に転生するんですか? ほら、世界を救うとか、魔王を倒すとか、目的は何ですか?」
「目的、ですか。それは必要ですか?」
「え?」
「目的を求めるのは因果が思考の基盤となった地球世界人らしい価値感ですね。この異世界転生にそれに類するものはあるとも言えますし、ないとも言えます。まあ、言うなればあなたが選んだ道が目的です」
「え、じゃ、じゃあ——」
口元まで俺は光の粒となって霧散し、言葉が遮られる。
(俺が選んだ道が異世界転生の目的?)
(……10個全て選んだ場合はどうなるんだ?)
体全てが消え去り何も見えなく聞こえなくなるが、意識だけは続いていて思考することはできた。そのため、脳味噌もないのにどうやって思考しているんだろうか?とぼんやり考えていた。
(そんなことより、これからのことを考えた方がいいか。)
(異世界のどこに転生されるんだろうか?)
(今と同じ肉体で異世界に行くんだろうか?)
(イキ女神は十道全て選ぶとどうなるか分からないと言っていたが、どうなるんだろうか?)
考えるべきことは大量にあるし、不安だってある。
しかし、俺はこれから始まる異世界ライフへの期待に胸を膨らませていた。
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